【甲子園】兄を追いかけ島を飛び出した「野球小僧」社・福谷宇楽 夏初出場、初勝利の歴史つくる

社対二松学舎大付 8回表社1死三塁、中犠飛を放ちベンチに戻る福谷(撮影・野上伸悟)

<BIG LOSER~敗者にもドラマ~>

<全国高校野球選手権:二松学舎大付7-5社>◇14日◇2回戦

島を飛び出した「野球小僧」の夏が終わった。地元の大声援を受け、終盤3回で5点を返し、9回は2死満塁の大チャンス。ただあと1歩届かず、福谷はネクスト・バッタースボックスでゲームセットを迎えた。「素直に楽しかった。悔しさはあるが後悔はない」。3番で無安打だったが、犠飛で1打点。遊撃守備も堅実にこなし県大会からの9試合で1失策。攻守の要としてチームを支えてきた。

兵庫・淡路市出身。4学年上の兄陽向(ひなた)さんもプレーした社での野球に憧れ、道を追いかけた。中でも寮生活に魅力を感じた。「親に頼りすぎないということは自分にとって成長できるなと思った」。津名中の野球部監督で、当時福谷を指導した巽(たつみ)史明氏(49=現一宮中監督)は「中学に入ってきたときから社に行きたいと言ってました」と振り返る。

巽監督は、同じく淡路島から社に進んだ現阪神近本光司を中学時代に指導している。福谷が中学2年の夏過ぎ、プロ入り前で大阪ガス所属だった近本が訪れ、一流の打撃を目の当たりにした。「なんでそんなに飛ばせるんやろという風に思っていた」。巽監督は教え子2人の共通点について「どっちも野球小僧。それが一番ですね」とうれしそうに語った。

憧れだった社で夏初出場、初勝利の歴史をつくった。今後は兄や近本と同じく関学大でプレーを続けるという。「社会人野球をしたいので、上の選手からしっかり吸収して、負けないような選手になりたい」。福谷の夏は終わっても野球小僧はまだまだ続く。【波部俊之介】