【甲子園】仙台育英が初V王手、2年橋本航河が3安打3打点、投げても「2年生投手リレー」

決勝進出を果たし応援席に向かって笑顔で駆けだす仙台育英ナイン(撮影・上山淳一)

<全国高校野球選手権:仙台育英18-4聖光学院>◇20日◇準決勝

夏史上初となった準決勝での「東北勢対決」。仙台育英(宮城)が、聖光学院(福島)に18-4で大勝。東北勢初の“夏40勝”に到達し、7年ぶり3度目の決勝進出と東北勢初優勝に「王手」をかけた。橋本航河外野手(2年)が、2戦連続3安打で3打点。投げては高橋煌稀、湯田統真、仁田陽翔による「2年生投手リレー」で隣県のライバル校を寄せつけなかった。

聖光学院は先発左腕、小林剛介が1回0/3を6安打5失点。エース佐山未来(ともに3年)は5回130球の力投も、9安打7四死球10失点と打ち込まれ、悲願の日本一に届かなかった。

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仙台育英の背番号「11」が自分の底力を信じた。1回、1死二、三塁のチャンスも無得点。先制点を逃したその裏、マウンドに上がった高橋は、グラブを胸に当て気持ちを落ち着かせた。だが、先頭に四球を与えると、1死一、三塁で先制適時打を浴びた。「自分でも今日の調子は良くないと分かった」。以降も四球を与え満塁とし、相手6番を迎えた。「外で押してゴロで打ち取るイメージ」も、逆球の内角直球で詰まらせ、投ゴロ併殺。辛くもピンチを脱した。

1度、傾きかけた流れを自ら引き戻した。2回、1-1で迎えた無死一、三塁のチャンス。打席に立った高橋は、フルカウントからの9球目。勝ち越しとなる三塁線を破る適時打。この一打で勢いに乗ったチームは、打者14人で一挙11得点の猛攻で試合を決めた。須江航監督(39)は「尾形(樹人捕手)としっかり意思疎通してくれた。幼なじみというか、そのバッテリーだったから(1回は)1点で済んだ。複数失点していたら逆のスコア」と1回の粘りを評価した。

俊足巧打の2年生も負けていない。1番橋本は、この日2本の適時打を含む3安打3打点。19打数9安打で打率4割7分4厘と躍動する。宮城大会は9番でチームトップの打率6割6分7厘をマーク。下位から上位につなぐ役割を全うしていた。須江監督は「僕は9番にいいバッターを置きたいという打順のこだわりがある。その中で一皮むけて、いい1番バッターに成長しているなと思います」と活躍を喜んだ。

橋本は広島出身。自宅の庭にはティー打撃ができるネットが張られ、バットを振ってきた。父秀幸さん(52)は「僕も仕事があり、妻にも投げてもらいましたが、中学時代は1日1000球を打つようにしてきました」。県外の強豪に進学し、聖地で躍動する息子の姿を見て「非常にうれしい」と目を細めた。

宇部商(山口)OBの秀幸さんは、同校1年の85年にPL学園(大阪)との決勝をスタンドで応援。サヨナラ負けする瞬間を目にした。同じ山口県勢で85年以来の決勝進出を果たした相手との頂上決戦。日本一に輝く瞬間を、息子が父にプレゼントする。【相沢孔志】

○…頼もしい2年生3投手も、しっかりつないで聖光学院打線を抑えた。今大会2試合目の先発を任された高橋は、初回に1点を先制され、さらに1死満塁とピンチを背負った。しかし、6番打者を内角高めの140キロ直球で狙い通りの投ゴロ併殺。最少失点でしのぎ、2回を1失点にまとめた。続く湯田が4回3失点でつなぎ、最後は左腕仁田が3回を無失点。高橋は「ここまで東北は優勝がなかったので、2年生なんですけど、少しでも優勝に貢献できるように頑張りたい」と力を込めた。