仙台育英初優勝、東北108年目の悲願「白河越え」達成/東北の野球史

第51回全国高校野球選手権 松山商対三沢。決勝戦引き分け再試合で力投する太田幸司(三沢3年)(1969年8月19日撮影)

春夏通算100校目の初優勝で、甲子園の優勝旗が白河の関を越える。仙台育英(宮城)が下関国際(山口)に快勝。東北勢が阻まれ続けた決勝の壁を「13度目の正直」で乗り越えた。同校OBの須江航監督(39)が18年就任から掲げるスローガン「日本一からの招待」の下、東北を中心に集結したナインが躍動。1915年(大4)第1回大会の秋田中(現秋田高)の準優勝から108年目の夏に、歓喜の瞬間が訪れた。

■東北の野球史

◆1915年(大4) 全国中等学校優勝野球大会(夏の甲子園の第1回大会)が豊中球場で行われ、秋田中が決勝で京都二中に延長13回、1●2でサヨナラ負け。

◆16年 一関中が岩手勢で初出場。

◆23年 仙台一中が宮城勢で初出場。

◆24年 選抜中等学校野球大会(春の甲子園の第1回大会)が名古屋市で開催。第26回まで東北勢の出場はなし。この夏から甲子園開催に。

◆26年 八戸中が青森勢で初出場。

◆1934年(昭9) 福島師範が福島勢で初出場。同11月、大リーグ選抜が仙台の八木山球場で全日本を7○0で下す。ベーブ・ルースが来日初アーチを含む2発。ルー・ゲーリッグ(ともにヤンキース)も本塁打。同12月、大日本東京野球倶楽部(現巨人)が誕生。初代メンバーに岩手出身の久慈次郎捕手(入団は辞退)、秋田出身の畑福俊英投手ら。

◆36年 山形中が山形勢で初出場。

◆48年 川上哲治(巨人)が仙台の評定河原球場で行われた金星戦で、プロ野球初の1イニング2本塁打。

◆49年 新人の大岡虎雄(大映)が5月7日阪神戦(評定河原球場)で3打席連続本塁打。

◆50年 6月28日に青森市営球場で、藤本英雄(巨人)が西日本を相手にプロ野球初の完全試合。

◆55年 一関一が東北勢でセンバツ初出場。

◆56年 八戸が東北勢でセンバツ初勝利。2勝を挙げて4強。

◆69年 アイドル的人気を誇ったエース太田幸司の三沢が、夏の甲子園決勝で松山商と延長18回引き分け再試合の末、2●4で敗れた。

◆71年 「小さな大投手」こと田村隆寿の磐城が夏の甲子園決勝で桐蔭学園に0●1。

◆73年 八木沢荘六(ロッテ)が10月10日太平洋戦(宮城)で完全試合。

◆74年 楽天が誕生する以前、ロッテが仙台を73年に準本拠地、74~77年に本拠地とし県営宮城球場(現楽天生命パーク)を使用した。74年に金田監督でリーグ優勝。プレーオフは宮城球場で行われたが、日本シリーズは開催されなかった。当時はオールスター戦の実施要項に収容人員3万人以上の規則があり、日本シリーズ運営委員会はその規則に準じて使用球場を決定。ロッテは収容人員3万人に満たない宮城球場ではなく、後楽園球場をホームとして中日と戦い日本一に。

◆78年 今井雄太郎(阪急)が8月31日ロッテ戦(宮城)で完全試合。

◆79年 夏の甲子園が現行の49代表制に。

◆1989年(平元) 大越基の仙台育英が夏の甲子園決勝で吉岡雄二の帝京に延長10回0●2。

◆91年 伊藤義博監督(故人)が84年就任後に力をつけた東北福祉大が、全日本大学野球選手権決勝で関大を4○2で破り初優勝。延長17回、金本知憲が勝ち越しの2点適時安打を放ち、投手陣は斎藤隆、関根裕之、作山和英のリレー。高校、大学を通じて初の「白河越え」達成。

◆2001年 左腕エース芳賀崇の仙台育英がセンバツでは東北勢初の決勝に進むも、木内監督の常総学院に6●7。

◆03年 2年生のダルビッシュを擁した東北が夏の甲子園決勝で、常総学院に攻略され2●4。

◆04年 東北福祉大が2度目の全日本V。11月2日に東北楽天ゴールデンイーグルスがプロ野球のオーナー会議でパ・リーグ新球団として正式承認される。

◆06年 秋田・にかほ市代表のTDKが、都市対抗野球決勝で日産自動車に4○3。東北に初の黒獅子旗をもたらす。

◆09年 菊池雄星の花巻東がセンバツ決勝で今村猛の清峰と投手戦。0●1で惜敗。

◆11年 東日本大震災が発生。春季東北大会は中止になったが、光星学院が夏の甲子園決勝に進み、日大三に0●11で敗れた。光星学院は甲子園で3季連続決勝進出を果たしたが、12年は春が3●7、夏が0●3でともに藤浪らの大阪桐蔭に敗れた。

◆12年 花巻東・大谷翔平が岩手大会準決勝で、球場表示のスピードガンで160キロを計測。

◆13年 楽天が創設9年目で初のリーグVから日本一まで上り詰めた。日本シリーズは第7戦までもつれ、最後は抑えで登板した田中将大が胴上げ投手に。

◆15年 佐藤世那、平沢大河らの仙台育英が3度目の甲子園決勝に挑むも、小笠原らを擁した東海大相模に6●10で屈した。

◆18年 夏の第100回大会に、金足農が秋田勢103年ぶりに決勝進出。1人でマウンドを守ってきた吉田輝星が根尾、藤原らを擁し、2度目の春夏連覇を飾った大阪桐蔭につかまり、2●13で涙をのんだ。

◆2019年(令元) 大船渡・佐々木朗希が4月のU18高校日本代表候補1次合宿の紅白戦に登板し、国内高校史上最速記録の163キロをマーク。夏の岩手大会でも4回戦で160キロを計測。だが、決勝には登板せず、チームも大敗。

◆20年 新型コロナウイルスの流行で春夏とも甲子園中止。

◆22年 仙台育英が春夏通じて東北勢の甲子園初V。優勝旗が白河の関を越える。

※校名は当時、敬称略