八戸工大一・葛西凜が中央学院大進学、前主将砂は亜大、前エース広野は専大 卒業後の活躍誓う

卒業後の活躍を誓った八戸工大一の左から砂、葛西、広野(撮影・相沢孔志)

関東でしのぎを削り、4年後のプロ入りをつかむ。昨夏の青森大会準Vの八戸工大一・葛西凜捕手(3年)が今春、千葉大学野球リーグの中央学院大に進学する。集大成の同大会では4試合で複数安打を放ち、打率5割5分6厘をマーク。二塁送球タイムは1・88秒の強肩を誇るが、昨秋のドラフト会議では指名漏れを経験。21年明治神宮大会優勝校での再出発を誓った。前主将の砂頼人内野手(3年)は昨年の全日本大学選手権で優勝した東都大学野球リーグの亜大、前エースの広野風雅投手(3年)は専大に合格した。

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葛西が、高校野球で味わった「悔しさ」を原動力に変える。21年秋は東北大会4強。昨夏はチームを12年ぶりの決勝進出に導いたが準優勝。あと1歩のところで甲子園出場を逃し「高校では日本一を目標にやってきて達成できなかったので、大学でも日本一を目指して頑張りたい」と意気込んだ。

恩師の言葉が背中を押してくれた。1年の秋、長谷川菊雄監督(46)から「お前はプロに行けるぞ」といわれ、プロを志した。昨秋のドラフト会議は長谷川監督、両親とともに吉報を待ったが、青森の高校、大学でプロ志望届を提出した5人の中で葛西のみ指名されなかった。「監督にプロの世界を推していただいて、学校や地域を活性化させたくてプロに行きたかった。(指名漏れ後に)監督からは『大学の4年間でもっと成長しろ』と言われました」と前を向いた。

同地区のライバルに近づく。昨夏、甲子園に出場した聖光学院・山浅龍之介捕手は中日4位、八戸学院光星・佐藤航太外野手(ともに18)は、ソフトバンク育成11位で指名を受けた。葛西は「ずっと自分の中で勝負していたけど(プロに)行けなかった悔しさを4年後にぶつけて、プロで活躍できる選手になりたい。(指名漏れしても)気持ちは変わらない。今までお世話になった人に恩返しをしたい」。卒業後の進路は違うが、ライバルたちと同じプロで活躍するという目標を胸に、大学野球で奮闘する。【相沢孔志】

◆葛西凜(かさい・りん)2005年(平17)1月6日生まれ、青森県中泊町出身。中里小2年から中里北栄クラブで野球を始め、5年からはNSゴールドスターズに所属。中里中では軟式野球部。八戸工大一では1年秋からベンチ入り。181センチ、76キロ。右投げ右打ち。家族は両親と兄。目標の選手はソフトバンク甲斐。

■広野との対戦楽しみ

亜大に進学する砂は昨年9月、福島・郡山市で行われたリーグ戦を観戦し、名門のスタイルに魅了された。「全力プレーや全力疾走を徹底されているチーム。他の大学生にはない雰囲気やベンチワークをされていたので、そこに強く憧れました」。同選手権で20年ぶり5度目の優勝を果たしたチームでの目標を聞かれ「日本一には絶対になりたい。非常にレベルの高いチームでレギュラーを取りたい」と言葉に力を込めた。

プロに活躍の場を移す亜大の先輩に感銘した。中日6位の田中幹也内野手(22)は身長166センチ。164センチで同じ内野手の砂は「体が小さいことは不利ではないけど、多少、そういう考えを持っていた。その中でも(プロで)活躍する選手はたくさんいるので、そういう人を目標にしたい」と理想を描いた。

岩手沿岸部の洋野町出身。楽天ジュニアに選出された逸材は同校進学後、下宿生活を送った。「変な話、中学の頃は電車の乗り方すらも分からなかった。遊ぶと言ったらグラウンドで野球をしたり、体育館で体を動かすことしかしてこなかったので、八戸に来て世間は知れたかな」と笑顔で振り返った。同大進学後は同じリーグの広野と対戦する可能性もある。「非常に楽しみです。絶対に打ちたいです」。グラウンドで再会するため、大好きな野球の技術をさらに磨いていく。

◆砂頼人(すな・らいと)2004年(平16)4月4日生まれ、岩手県洋野町出身。帯島小1年から帯島スポーツ少年団で野球を始め、小6年時に楽天ジュニアに選出された。大野中では三沢シニアでプレー。八戸工大一では1年夏からベンチ入り。164センチ、60キロ。右投げ右打ち。家族は両親と兄、弟2人。好きな選手は西武滝沢。

■OB向井きっかけ

専大に進学する広野は「1部に昇格し、大学日本一になって、プロ野球選手になれたら」と、青写真を描いた。進学のきっかけは、八戸工大一でエースを務めたOBの存在だった。1年冬に同大の向井龍介投手(4年)が来校し「いろいろ説明してくれたり、ピッチングを見て、すごく行きたいと思いました」。昨年のドラフトでは菊地吏玖投手(22)がロッテ1位で入団。「(専大は)投手がそろっているイメージ。自分もそこで成長したい」と夢をもらった。

ロッテ種市篤暉投手(24)、西武黒田将矢投手(18)らを輩出した同校。冬季は砂浜での走り込みなどで下半身を強化してきた。広野は同校入学で120キロ中盤だった球速が3年春には最速144キロをマーク。長谷川監督の指導については「自分が分からないことを知っているので、投手について細かく指導していただきました。自分が悪い時はしっかり修正してくださるので助かりました」と感謝した。

目標の投手は、今オフにソフトバンクから米大リーグのメッツに移籍した千賀滉大投手(29)を掲げる。「育成出身でエースになられた。自分も努力して頑張りたい」。球速の第一目標は150キロ。大投手への険しい道を歩んでいく。

◆広野風雅(ひろの・ふうが)2004年(平16)6月14日生まれ、青森県野辺地町出身。野辺地小3年から野辺地スポーツ少年団で野球を始める。野辺地中では軟式野球部。八戸工大一では2年秋からベンチ入り。176センチ、73キロ。右投げ右打ち。家族は両親、姉、弟。好きな選手はメッツ千賀。