【センバツ】憧れダルビッシュと同じ「1」背負い 東北・ハッブス大起、大人のピッチング見せる

真剣なまなざしで投球練習するハッブス(撮影・山田愛斗)

第95回選抜高校野球大会(18日開幕、甲子園)の組み合わせ抽選会が今日10日、大阪市内で行われる。

11年以来12年ぶりに出場する東北(宮城)の注目は、最速145キロ右腕・ハッブス大起投手(2年)だ。OBで侍ジャパンのパドレス・ダルビッシュ有投手(36)に憧れるエースは、同じ背番号「1」を受け継ぎ、聖地デビューを果たす。

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身長188センチの本格派右腕ハッブスが、甲子園デビューを心待ちにしている。とにかく楽しんで「勝つことよりも大事なものを探そう」という東北の野球を、先頭に立って体現する。

「『やってやるぞ』という気持ちと、自分たち独特の『エンジョイベースボール』というスタイルが、どのぐらい通用するか、甲子園でどういう力を発揮できるか、自分でもワクワクしています」

今季のテーマは“大人のハッブス”だ。「もともと自分はめちゃくちゃ強気で、おらおらしていて」と、闘志むき出しで打者と勝負するタイプだったが、淡々と投げ込むことを意識。甲子園では「『大人のピッチング』というか、冷静に落ち着いて対応し、どの場面でも相手から嫌がられるような『うわっ、ハッブス来た』と思われるピッチングをしたいです」と意気込む。

昨秋の東北は優勝した宮城県大会、準優勝した東北大会と全試合で継投を貫いた。今季もほかの投手とともに目の前の打者を抑えることだけを目指す。

球速は二の次だ。かつてのハッブスなら「140キロ後半が出れば『よっしゃー』となっていたんですが、試合でいい流れをつくるのが自分の役目」と理解している。仮に最速が130キロ台でも「悔しさは何ひとつないですし、球速に走ると、ただの自己満足になる。そこはあまりこだわらずにやっていきたいですね」と自然体の構えだ。

東北に入学したのは「究極の人間、究極の野球選手」と憧れるダルビッシュの母校だからだ。進路を選択する際には、数々の強豪校から勧誘されたが「ダルビッシュさんを目標に、同じグラウンドで頑張れることに希望を持ち、本当にダルビッシュさんが決め手ですね」と迷いはなかった。

昨秋からはダルビッシュも身につけた伝統の背番号「1」を背負う。県大会と東北大会の計7試合に登板し、計32回2/3を8失点(自責7)、防御率1・93。エースの自覚を胸に安定した成績を収めてきた。

「大魔神・佐々木(主浩)さん、斎藤隆さん、ダルビッシュ有さんなど数々の偉大なOBの方が背負ってきた番号。雲の上の存在ですが、『少しでも近づけるように頑張ろう』と思わせてくれるようなエースナンバーです」

今冬はセンバツに出場できるという感謝の気持ちを再確認しながら練習に打ち込んできた。変化球はカーブ、スライダー、カットボール、フォーク、スプリットが持ち球だったが、右打者の懐に食い込むシュート回転の球がなく、新たにツーシームを習得。「まだ完璧ではない」が、動画で見たダルビッシュの握りを参考に磨いてきた。

センバツでは佐藤洋監督(60)が「勝ち負けは一切関係ありません」と話すように、優勝は狙わずに大舞台を楽しむことに集中する。ハッブスは言う。

「自分たちの『エンジョイベースボール』というスタイルで、『野球はもともと楽しいものなんだよ』ということを全国の皆さんにお届けしたいと思います」

無限の可能性を秘める大器が、まもなく聖地のマウンドに立つ。【山田愛斗】

◆ハッブス大起(はっぶす・たいき)2005年(平17)8月3日生まれ、埼玉県伊奈町出身。小学4年時から白鳩ジュニアーズで野球を始め、6年時にはヤクルトジュニア選出。中学は上尾シニアでプレー。憧れの選手はパドレス・ダルビッシュ有。好きな有名人はジャスティン・ビーバー。家族は両親と兄、姉。188センチ、85キロ。

■千葉百音も出席

東北(宮城)は9日、春の全国大会に出場する硬式野球部、男女ソフトテニス部、女子柔道部などの壮行会およびフィギュアスケートなどの冬の全国大会報告会を仙台市内の同校で開いた。選抜高校野球の組み合わせ抽選会を今日10日に控えたハッブス大起投手(2年)は「せっかくなら大阪桐蔭さんとやりたい。強豪校、日本一を何回も取っている常連校といい試合ができれば」と意欲を見せた。

エースには手応えがあった。8日に打ち上げた静岡・沼津合宿では静岡県の2校と練習試合を実施。1戦目は3回無安打無失点と好投。2戦目は走者を想定したクイック投球の確認を行った。「ノーワインドアップに比べるとばらつきがあったが、去年と比べたら大きく成長している。ゲームをつくることが自分の仕事だと再認識できた」と自信をのぞかせた。

この日は、フィギュアスケート全日本選手権で5位、4大陸選手権では初出場ながら3位の好成績を収めた千葉百音(もね、17)も報告会に出席。全国大会に出場する各部活動の健闘を祈るとともに「野球部の甲子園出場が決まってすごくうれしかった。本当に頑張ってほしい」とエールを送った。「東北」の名を背負う他の部活動に負けじと、12年ぶりの甲子園で存在感を示す。【相沢孔志】