<高校野球西東京大会:桜美林6-0富士森>◇18日◇4回戦◇スリーボンドスタジアム八王子
今夏限りで退任する指揮官のために、技巧派サウスポーが快投を続ける。桜美林(西東京)の主将でエースの吉田啓人投手(3年)が、4安打無四球の87球で「マダックス」を演じ、昨夏4強の富士森を完封した。7回参考ながらノーヒットノーランを飾った初戦の保谷戦に続き、2戦連続完封。最速131キロでも、抜群の制球力と多彩な変化球で手玉に取った。最後の指揮となる片桐幸宏監督(64)に、21年ぶりの甲子園をプレゼントする。
技巧派左腕の本領発揮だった。吉田は9回をわずか87球、単打4本しか許さず、三塁も踏ませなかった。奪三振は3個でも、凡打の山を築かせた。球数1ケタは5イニングを数え、100球未満の完封を意味する「マダックス」を楽々達成した。前回登板では7回参考の無安打無得点。2戦連続の快投に「自分は守備に助けてもらうスタイル。どんどん守備に頼って打ち取っていく」と、狙い通りの投球だった。今夏がラストイヤーの片桐監督も「ストライクが先行していて良かったね」と褒めた。
エースは自他共に認める「熱い男」だ。1球ごとに雄たけびを上げ、闘志を前面に押し出す。「楽しいと自然に出てしまう」というガッツポーズが、トレードマーク。昨夏、指揮官に「気持ちの強さ」を買われ、主将に指名された。吉田も「気持ちだけは誰にも負けないつもりでやってきた」と意気に感じ、自身も最後の夏に臨んだ。
野球を始めた小学1年生の頃から、感情が表に出ていた。「普段はいたって普通。マウンドに立つと攻めの気持ちが自然と出る。周りからは『ギャップがすごいね』と言われます」。父健二さんも「普段はおとなしくて優しい子。試合になると一気に変わる」と、頼もしそうに見つめた。
春6度、夏4度の甲子園出場を誇る伝統校。夏は76年に初出場日本一。当時の主将が片桐監督だった。教員として母校に戻り、監督、部長として長年率いてきた。吉田は「ずっと自分たちを鼓舞して前向きにしてくれる。甲子園に連れて行って、長い夏にしたい」。熱いエースの熱い夏はまだ終わらない。【玉利朱音】
◆吉田啓人(よしだ・けいと)2005年(平17)5月9日生まれ、東京都府中市出身。小1から府中南町ファイターズで野球を始め、中学は国立中央シニアでプレー。昨夏は準々決勝の日大三戦で先発登板も、チームは1-9の8回コールドで敗退。50メートル走は6秒9、目標とする選手はDeNA今永。170センチ、73キロ。左投げ左打ち。好きな食べ物は焼き肉。特技は逆立ち歩き。