<君がらんまん~ある敗者の物語~>
<高校野球香川大会:英明13-5志度>◇26日◇決勝◇香川県営レクザムスタジアム
高校野球のドラマは、勝った者にだけ生まれているわけではない。日刊スポーツでは今夏、随時連載「君がらんまん」で、勝者だけでなく敗者にもスポットを当てた物語をお届けする。
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香川大会決勝の3回。この日2本目のアーチを浴びた志度・新鞍護(にいくら・まもる)投手(3年)は三塁側ベンチの父に合図をした。「代えてくれ」。右手人さし指のマメがつぶれ、ほぼ1人で投げてきた体はボロボロだった。
「僕が言わないと代えられなかったと思う。3年間、父子でやるのはお父さんの方が気を使ったと思います。僕が引退することで少し楽になってほしいです」と思いやった。前夜、自宅で人さし指に関して「いけるか?」と心配された。どんな状態でもマウンドに上がるつもりだった。その性格を誰より知る父。だからこその交代直訴だった。
幸一監督の54歳の誕生日に、甲子園切符を贈ることはできなかった。普段、父子の距離はあまり近くない。護は「今日くらいは言わないと。3年間ありがとうございました、と。お疲れさん、くらいしか言われないと思いますけどね」と笑った。【柏原誠】