【甲子園】富山商・新井丈弐偉公式戦初スタメンの波乗り球児がつかんだ、聖地の浜風

東海大相模対富山商 1回表東海大相模無死、才田の左前打を処理する新井(撮影・前田充)

<ラストカレンダー~夏の終わり~ 富山商・新井丈弐偉(じょにい)外野手(3年)>

「1番レフト新井くん」。場内アナウンスに、応援席がどよめいた。打撃を買われ、公式戦初スタメンのサプライズが甲子園。今夏の富山大会はメンバー外で、今春以来となる背番号19をもらった。

相手は身長198センチのプロ注目左腕藤田。「思い切り振ることで気持ちで勝ちたい」。ストライクは1球も見逃さず、全8球空振りかファウルの渾身(こんしん)スイングで立ち向かった。2打席連続空振り三振に倒れ、6回守備中に両ふくらはぎをつって無念の途中交代となった。

3人姉弟の次男。「すごく気に入っている」名前は、サーファーの父清人さん(49)の「『丈』夫な、『弐』次男、『偉』大な人になってほしい」との願いと、歌手・桑田佳祐(68)のヒットソング「波乗りジョニー」に由来する。関西入り後の宿舎では、同曲をかけてリラックスすることが日課だった。

「努力家なんで、本人にまかせています」。父清人(49)さんは、偶然目にした、楽しそうに練習する少年野球チームの様子を見て、丈弐偉選手に野球を始めないかと提案した。

中学まで週末は、父のお下がりのサーフボードを片手に、日本海の北側からの風を浴びていた。

高校入学後はけがを防ぐため、サーフィンは一時休止中。いまは、個人競技の波乗りにはない、チームで戦う野球の醍醐味にとりつかれている。「野球は9回まで時間制限がなくて、何があるかわからない。めちゃくちゃ悔しいですけど、最後まで簡単に諦めなければ、何かが起こる」。

今夏の7月の県大会ではスタンドで応援する傍ら、けがや体調不良を理由に、入れ替え時のバックアップ要員として、メンバーと同メニューをこなし続けた。クラス内では、販売実習でカレーパン販売の店長役を買って出るムードメーカーだ。

前崎秀和監督(47)は「チームにエネルギーを与えられる選手」と抜てき理由を説明。鼻の先に黒土をつけたまま現れた新井は「高校ナンバーワン投手なんだなって。スライダーが消えていく。めちゃくちゃ悔しい」と唇をかんだ。甲子園で力の限りを尽くした姿は尊い。第2の野球人生へと続く大海原でも波に乗る。【中島麗】