<全国高校野球選手権:東海大相模8-1広陵>◇3回戦◇16日◇甲子園
甲子園はほぼ俺の庭!! 東海大相模(神奈川)が広陵(広島)との強豪対決を制し、小笠原慎之介投手(現中日)らを擁して全国制覇した15年以来のベスト8入りを決めた。1点リードの5回、途中救援したプロ注目の広陵・高尾の初球を1番の才田和空(さいた・わく)内野手(3年)が適時打を放ち貴重な追加点を挙げた。母校の西宮市立鳴尾中は甲子園の目と鼻の先にあり、他校のどの選手よりも聖地を感じてきた“ご当地ヒーロー”がチームを快勝へ導くとともに、9年ぶりの夏の甲子園優勝へまた1歩近づいた。
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才田は49代表校の誰よりも甲子園の空気を知る。1点リードの5回、1死三塁で広陵はエース高尾に交代。打てば乗れるし、その逆も。「初球からびびらず。結果どうこうより」。想像より伸びた直球を振り切ると、右前に落ちた。一塁上で喜ぶ暇なんてない。ぎりぎりまで次の塁をうかがうのが東海大相模の伝統だ。
浜風の来る方へ徒歩8分50秒、才田の原点がある。その名も「甲子園公園」。母智恵さん(44)は「いつもキャッチボールとかして遊んでましたね」という聖地だ。この日も「チャリで応援に来ました」と笑う母。阪神戦の応援に行くのは日常茶飯事。才田は甲子園に抱かれて育った。
東海大相模の強さに憧れ、実家を離れて3年たってタテジマに身を包んで戻った。「鳴尾中から甲子園ですか? 3分くらいです」。信号手前だけ小走りして3分14秒。遠く神奈川で青春を過ごしても感覚は忘れない。3回、4回と三遊間の打球を華麗にさばき、先頭打者をアウトに。「三遊間が多いデータも出てたので、自分の感覚で3歩寄って」。忍者のようなキレキレの動きでこなし、吉本新喜劇への入団を夢見ていた母も「私がチャキチャキしてるから守備うまいんですかね」と笑う。
そんな“ご近所さん”のひと振りを機に、高尾から2回で5得点した。試合の流れを決め、かつ“東海大相模=V候補”をライバル校へ印象づけた。「自分たちもずっと土のグラウンドで練習してきたので」と、この日は三塁手の日賀との三遊間での好守備で何度も甲子園をわかせた。守備の堅実さがさらに問われる低反発バット時代。激戦区・神奈川を勝ち抜いた大型左腕の藤田、早くもプロ注目の福田拓翔投手(2年)らの投手陣は安定感抜群だ。才田ら野手陣の得点力次第で、15年以来の全国制覇も近づいてくる。
大一番を制し、才田がアルプスへ駆けると見知った顔が最前列に。「地元の仲間たちです。最後の夏に来られて、応援にも来てくれて。すごく幸せ者です」。まだ自分は家に帰れない。頑張ればあと3試合、甲子園で高校野球をできる-。強いサガミの先頭にいる息子を母も信じ、ペダルを踏む。「帰りもチャリで5分です」。それにしても近い。【金子真仁】
◆才田和空(さいた・わく)2006年(平18)10月10日生まれ、兵庫・西宮市出身。浜甲タイガースで少年野球を始め、当時から遊撃。小6時に選出のタイガースジュニアでは中堅手。和空の「空」は漫画ドラゴンボールの主人公・孫悟空に由来。趣味はスキンケア。右投げ右打ち。174センチ、73キロ。
◆準々決勝組み合わせ抽選 8強入りを決めた3回戦の勝利チーム4校が準々決勝の組み合わせ抽選を行った。各チームの主将が試合終了直後にくじを引き、組み合わせが決まった。準々決勝後には、準決勝の組み合わせ抽選が再度行われる。