<書き切れなかった東北の夏 2024>
第106回全国高校野球選手権(甲子園)は、京都国際の初優勝で23日に幕を閉じました。日刊スポーツ東北6県版では「書き切れなかった東北の夏 2024」と題し、記者が見た今夏の一幕を、全4回でお届けします。
第1回は春夏通じて初の甲子園4強に輝いた青森山田。同リトルシニア時代に日本一に輝いた橋場公祐主将、桜田朔投手(ともに3年)のバッテリーと、チームを陰で支えた野球部のメンタルコーチ前田凌汰さん(29=和歌山県立医科大学げんき開発研究所)です。
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2人の高校最後の夏は、1イニング、17球のやりとりだった。石橋(栃木)との3回戦、背番号10の桜田が9回表からマウンドに上がり、打者4人に対し、1四球2奪三振の無安打無失点で試合を締めた。
今春センバツの準々決勝・中央学院(千葉)戦で先発し4回途中5失点(自責2)で降板してから、なかなか調子が上がらず、7月末には「試合が怖いです」と胸中を明かしていた。この日は、恐怖に負けじと笑顔を貼り付け、橋場を信じて腕を振った。チームは勝利し、99年以来25年ぶりの夏8強に名を連ねた。
その後、準々決勝の滋賀学園戦、準決勝の京都国際戦で、桜田の登板はなかった。敗れた準決勝後、橋場は「どんな形であっても彼(桜田)に、最後、試合に出て欲しかった」。決して涙を見せなかった主将が、中学1年から6年間、苦しい時期もいい時もそばで見てきた相棒のこととなると声を詰まらせた。
2人は21年8月6日、リトルシニア日本選手権で青森山田シニアが東北勢初優勝を果たした時の優勝バッテリーだ。決勝の東練馬シニア(東東京)戦で、0-5で迎えた3回から桜田が好救援。その時も「思い切って来い」と言う橋場を信頼してミットに投げ込んだ。5回には橋場の2ランスクイズで勝ち越し、逆転優勝。日本一のバッテリーとなった。日本一に輝いたばかりで、桜田は「甲子園で勝ち上がっていけるようなチームになりたいです」と意気込み、橋場は「甲子園でもう1度日本一になり恩返しをしたい」とすでに甲子園を見据えていた。
掲げた「高校でも日本一」のラストチャンス。1イニング17球、約6分のやりとりで終わったことが悔しかった。橋場は「(桜田を)投げさせることができなかったのは自分たちバッター陣が奮起できなかったから。申し訳ない気持ちしかないです」。桜田は「6年間ずっとバッテリーで…。僕のことを守ってくれていた。それに応えられなかった自分が情けないですし、最後までそう言ってくれて本当に感謝しかないです」と目に涙をためた。2人の夢には届かなかった。
今後は、橋場は消防士を志し、桜田はプロ野球選手を目指して大学に進学する予定だ。桜田は「プロ野球選手になって(橋場に)まだやってるよというところを見せたいです」と誓った。今度はそれぞれの夢へ、新しいスタートを切る。【浜本神威】