<書き切れなかった東北の夏 2024>
第106回全国高校野球選手権(甲子園)は、京都国際の初優勝で23日に幕を閉じました。日刊スポーツ東北6県版では「書き切れなかった東北の夏 2024」と題し、記者が見た今夏の一幕を、全4回でお届けします。第2回は、甲子園初戦で涙をのんだ花巻東(岩手)の村上太一主将(3年)です。
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花巻東(岩手)の「泥だらけのキャプテン」の夏が終わった。甲子園初戦で滋賀学園に0-5で敗れ、村上太一主将(3年)は「自分たちの野球ができないまま、9回が終わってしまった」と淡々と振り返った。岩手大会5試合で17盗塁も、甲子園では「0」。2度の盗塁死やスクイズ失敗など、持ち味を生かせなかった。
それでも、村上は勇気ある姿でチームを鼓舞し続けた。5回先頭、二ゴロで一塁にヘッドスライディング。どんなゴロでも頭から飛び込む、岩手大会で何度も見せたプレーだ。「野球がそんなにうまくないので、なんとか姿勢だけでもチームを引っ張れたらなと思って毎回飛び込んでいます」と語っていた。
小学校の時からよく滑る子だった。母恵利子さんは「いつも泥だらけで。それが元気な証拠だと思って今まで洗っていました」。汚れていれば汚れているほど、調子が良かったと思う1つの指標だった。
練習で汚れたユニホームは村上が自分で洗うが、公式戦では父母会が洗濯してくれた。岩手大会準決勝の一関学院戦では胸の「花巻東」が隠れるほど泥だらけになったのに、2日後の盛岡大付との決勝前に、まっさらになって返ってきた。それが応援の形だった。
甲子園で敗れた後、村上は「毎試合泥だらけで渡して、申し訳ないなと思いつつ。きれいになったユニホームをまた着て、野球ができたことはうれしかったですし、楽しかった」と母からの応援を思い返した。黒土のついたユニホームは「1つ区切りなので、自分で洗ってみようかな」と、すっきりした表情で言った。
野球は続けるつもりだ。「甲子園に出たという18歳の経験がピークにならないように、ここからジャンプアップできるような人生にしていきたい」。自ら洗ったユニホームは、未来の自分へのエールになる。【浜本神威】