<高校野球埼玉大会:上尾4-2細田学園>◇14日◇3回戦◇大宮公園野球場
昨秋の埼玉大会4強の上尾はOBたちの心強いバックアップを力に変え、細田学園の反撃を振り切った。4-2と粘り勝ちを収め4回戦へと駒を進めた。
◇ ◇ ◇
ピンチを脱する1球がミットに収まると、上尾側のスタンドから大きな歓声が上がった。8回に1点差に追い上げられ、なお2死二、三塁。辻岡瑛人投手(3年)はカウント1-2から空振り三振を奪った。9回は3者凡退に抑え、153球の熱投。7安打8奪三振2失点の完投勝利だ。近年力をつける私立の細田学園との接戦を制した。
辻岡は「試合前に高野監督から『自分のピッチングに自信を持て』と言われ、その言葉が心に響いた。最後まで粘り強く投げ切れた」と充実した表情で振り返った。高野和樹監督(59)は「細田学園さんの魂を感じた。本当に素晴らしい試合だった」と相手の粘りをたたえた。
上尾は「公立の雄」として埼玉の高校野球を牽引(けんいん)してきた。今春センバツ21世紀枠の関東・東京地区候補校にも選ばれた。一方で、私学が充実した環境を整える現在、公立校が上位で争い続けることは容易ではない。「ネットを張り替えるにも何十万円もかかる。Tシャツ1枚だって昔より高い。限られた環境の中で工夫するしかない」と高野監督は語る。
そんなチームを支えるのが、世代を超えたOBの力だ。グラウンドに卒業生が足を運び、指導に当たる。平日でも多い日は10人ほど。大学で競技を続ける現役選手が練習に加わり、経験を伝える姿も。辻岡は「OBの方々は気さくに声をかけてくれて、とても心強いです」と感謝する。
再び甲子園の地に帰還させたい-。受け継がれる「上尾愛」が、公立の伝統校を42年ぶりの聖地へ後押ししている。【会田京叶】
○…球場には多くの上尾OBが駆けつけた。6期生の小川満さん(79)は定年退職後26年間にわたり母校へ足を運び、昨年まで打撃投手として後輩を支えてきた。「家も近いし、生徒たちから元気をもらいに来ているんだよ」と笑顔。高校時代は後にヤクルトで活躍した会田照夫さんとバッテリーを組んだ名捕手で、卒業後は社会人野球・新神戸電機で監督も務めた。高野監督は「小川さんは『俺もいつまで生きているか分からないから、生きているうちに甲子園へ行ってほしい』と言うんです。本当に連れていってあげたい」と話した。