<ルーキー記者たちの夏>
高校野球の地方大会が28日に終了した。日刊スポーツでは、今春入社した4人の新人記者が取材で奮闘。それぞれが体感した「1年目の夏」を振り返る。
◇ ◇ ◇
高校野球取材を始め、どんどんと気になっていった選手がいた。市船橋(千葉)の諸岡杜和(とわ)投手(3年)だ。各校のエースに話を聞いていて、「すごいと思った他校の選手」として多く名前が挙がり、期待が高まった。
本人にようやく会えたのは、同校グラウンドを訪れた6月19日のこと。インタビューではいろいろなことを話してくれた。野球を始めたきっかけや、活躍できず苦労した中学時代、そして2年半を過ごした市船橋や小学生からバッテリーを組む篠原颯捕手(3年)との集大成について。「絶好調です」という言葉も出て、この夏とんでもない投球を見せてくれるんじゃないか、と予感させた。
大会期間に突入したが、緒戦に諸岡は登板せず。こちらの取材の都合とかみ合わなかったこともあり、投球を直接見たのは準々決勝の専大松戸戦が最初で最後になった。相手はセンバツ4強の強力打線。それでも諸岡なら…と勝手な期待をして目にした初球に、度肝を抜かれた。やや外れた高めへの147キロ。抜群の伸びと球威にただ気押されるばかりだった。
試合が進むにつれ専大松戸打線につかまり、6失点。だが失点しても変わることなく、目の前の打者にものすごい球で敢然と立ち向かう姿からは、気迫が立ち込めていた。35度近い猛暑の中でも全く球威は衰えず、最後の打者にも146キロを出し8回を投げ抜いた。
試合後、目を赤く腫らした彼の取材を終えて、あることに気がついた。私はあのピッチングに釣り合うだけの記事を書けない。もちろん関連する質問はしたし事前取材もしている。ただ、ある日アドバイスを受けたように、試合を見ていない読者にも生の迫力を伝えるのが自分の仕事。それなのに、この日見たことを表現する知識や言葉も、その気迫の背景を十分に説明できるだけの取材の精度も、全く足りていなかった。
あれだけ楽しみにしていたのに、当日の記事には結局短く「胸を打つ投球」としるしただけ。「新人だから」で許されないほど犯したミスのどれよりも悔いが残っている。もう一度あんなパフォーマンスを目にしたときに、どんな準備ができているか、どれだけ言葉を尽くせるか。記者人生の大きな宿題となった。【服部航大】
◆服部航大(はっとり・こうだい)2002年(平14)6月27日生まれ、大阪府吹田市出身。小学校で野球を始めたが、サインを覚えられず挫折。その後は大学まで陸上競技(中長距離)に取り組む。26年4月に入社し、6月から高校野球千葉大会担当。大会期間中最もうれしかったのは、1度取材した方々によく声をかけていただいたこと。179センチ、65キロ。大会期間中にかなりやせた。