巨人田中将大投手(37)が、高校野球で導入が検討される「7イニング制」に反対の立場を示した。日本高野連の検討会議は、酷暑対策などを理由に「2028年の採用が望ましい」などの提言を出すが「7回はない」と私見を述べた。駒大苫小牧では全国高校野球選手権で2年時に優勝、3年には早実との決勝再試合で準優勝。全国に名をとどろかせる舞台となった甲子園だが「(開催場所を)変えてもいいのでは」と言及した。ドーム球場を含む分散開催など、未来の球児のために熟議を望んだ。
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あの夏から20年を迎えた7月。田中将は議論の行方を案じながら、はっきりと主張した。「7回制はないと思います。もっと他にやるべきことがあるのではないでしょうか」。言葉に力がこもった。
06年、真夏の甲子園にいた。3連覇を狙った早実との決勝では、斎藤佑樹と投げ合い、引き分け再試合の末に準優勝。2日間で20回249球を投げる死闘は、球史に深く刻まれた。前年には、決勝の京都外大西戦では2年生として甲子園初の球速150キロを出し、優勝投手となった。
あの夏も熱く、暑かった。時を経て、さらなる暑さに、高校野球改革が喫緊の課題としてクローズアップされている。昨年12月、日本高野連は10回にわたり開いた「7イニング制等高校野球の諸課題検討会議」の最終報告書として「(7回制は)28年からの導入が望ましい」と報告した。
その一報を聞いてから、ふに落ちない部分があった。「野球は9回。そこを動かすのはどうなのでしょうか。野村さんもおっしゃってましたが、野球は3の倍数でできている。僕もそういう考えです」。
ドラフト1位で入団した楽天で恩師となった野村監督。「野球は面白いことに、3の倍数で成り立っている」と教わった。試合は9イニングで、前半、中盤、後半と3イニングに分かれる。3ストライクで三振。3アウトでチェンジ。ポジションは九つ、だ。野球人として染み込んだ本質。そこに手を入れるのか。
その前に、立ち止まってほしい。「甲子園ありきで考えるから、おかしくなるのでは」。聖地だ。自身の高校時代も、その場所を目指した。そして、その場所で歓喜も悔しさも味わい、日本列島を沸かせた。その経験を踏まえても、あえて言いたい。「ドーム球場でやるのはダメなのでしょうか。昔から甲子園でやっているから、皆が『甲子園じゃないと』という雰囲気が出てますが、いま小さい子は今後、例えば関西開催のままなら『京セラを目指す』と頑張るようになるかもしれない」。
過去を見るのでなく、未来を作る。いまの球児は「高校野球=甲子園」で日々の練習に取り組んでいる。その子たちの意見を聞けば、移転反対は当然だろう。「最初は批判が出るかもしれない」。ただ、甲子園ありきの先に7イニングが提言されるなら、それは違う。「この問題と向き合っている方々がいらっしゃいます。もっと良いアイデアが生まれるはずです」「準決勝、決勝は甲子園で行うなどの考えがあってもいいと思います」。既存の議論を尊重しながら、開催方法、日程など、手段はまだまだある。
懸念がふくらむのは、普及面でも「マイナスになるのでは」と考えるから。2イニング減だけで、出場機会を得られない選手は増える。プレーできる人数が減れば、自然と競技を離れる若者は増えるだろう。7イニング制の波がプロ野球界に押し寄せる未来も考える。「雇える人数もだいぶ変わる。少なくていいですから。放映権なども減額になる」。年俸減なら、憧れる子どもたちも減るだろう。
開催場所の議論一つ取っても、変えるべき順序がある。議論は尽くされたのか。甲子園の申し子「マー君」だからこそ、野球人として伝えたいことがある。【阿部健吾】
◆7イニング制 高校野球で行われてきた9イニング制の試合を2イニング短縮すること。同世代の国際試合ではスタンダードで、昨年の国民スポーツ大会でも採用。日本高野連が昨年12月に出した「7イニング制等高校野球の諸課題検討会議」の最終報告書では、酷暑対策などを理由に「2028年の第100回記念選抜高等学校野球大会ならびに各都道府県高等学校野球連盟の春季大会から採用することが望ましい」と提言した。現時点で導入が決まったわけではなく、引き続き議論が続く。