【田村藤夫】八王子実践・塚原君にデリケートな投手心理見た 平常心保てはどれほど困難なことか

八王子実践対鳴門渦潮 9回裏を抑えガッツポーズで喜ぶ八王子実践・塚原翔太(撮影・野上伸悟)

<全国高校野球選手権:鳴門渦潮2-1八王子実践>◇9日◇1回戦◇甲子園

八王子実践の塚原君の心理が、それこそ数秒で揺れ動くいていく様を、まざまざと見せつけられた。タイブレークでの10回裏、無死一、二塁からスタートした直後、塚原君とセカンド荒木君によって鮮やかなピックオフプレーが決まる。

二塁走者が1歩出たところで、最高のタイミングで荒木君がセカンドに入り、塚原君はほぼベース真上に投げてアウトにした。ビッグプレーだった。勝利を引き寄せるプレーに見えたし、9回に同点に追い付いた流れといい、このまま八王子実践が延長11回で押していくものとばかり思っていた。

それが、1死一塁で打者にボール、ボール、ボール。「どうして?」とも思ったし、ああ、投手心理とはこういうものかもしれないな、とも感じた。ほっとしたと言ったら言い過ぎか。

しかし、心のどこかで、行けると思いつつ、それまでの緊張感がわずかに抜け、それがピッチングに微妙に影響したのかもしれない。長く捕手をやっていた経験者として、塚原君が1ボールとしたタイミングで、もしも自分が受けていたなら、マウンドに行ったかな、とも想像していた。

投手の心理はデリケートで、何が幸いして、何が裏目に出るのか、とても予測はつかない。ましてや、夏の甲子園で、ギリギリのタイブレークで、平常心を保てというのは、どれほど困難で酷なことか。

塚原君は1ストライクは奪ったものの、右前打で1死一、三塁とされて、二ゴロで2死までこぎつけたが、最後は左前打で終わった。自分の力で切り開いてきただけに、一喜一憂する高校生のありのままの姿は、吸い込まれるほどに激しく、熱かった。

勝負が決する間際まで、揺れ動いた選手たちの気持ちを考えると、試合後は何も考えず、ただ無心で両チームに拍手を送るだけだった。(日刊スポーツ評論家)

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