<全国高校野球選手権:拓大紅陵1-0佐賀商>◇12日◇2回戦◇甲子園
佐賀商の背番号「9」溝口童夢外野手兼投手(3年)は、高校野球の現場に新たな風を吹き込んだ1人だ。
昨夏投手に復帰すると、生成AI「ChatGPT」を相棒に、変化球の習得にあたった。「一般的なツーシームの握りを3種類、画像にして教えて」と頼み、提案された握りをすべて実戦で試した。自分に合う2通りの握りを導き出し、今夏の県大会決勝で1失点完投するなど好投へとつなげた。
甲子園では初戦2回戦の拓大紅陵戦に1番指名打者で先発。4打数無安打に終わり、登板機会もなかった。「ちょっとうずうすしていたんですけど、(エース)東條も頑張っていたんで」と悔しさを押し殺した。大歓声に包まれた夢の甲子園は「まるでコンサート会場で野球をしているようだった。甲子園でプレーできて絶対に良かった」と振り返った。AIの画面上だけでは決して味わえないリアルな体験の尊さをかみしめた。
今後の進路について「野球はいったん終わりにしようと思っている」と話した。次なるステップは就職だ。「野球をやってきたので、じっとしているより体を動かす仕事がしたい」と、製造業などを視野に新たな一歩を踏み出すつもりだ。
AIを道具として自ら工夫し、課題を克服した経験は、大きな強みとなった。「これからも分からないことがあったらすぐAIに聞きます」ときっぱり。テクノロジーと実体験を融合させた高校野球の経験は、これからの人生においても確かな糧となるはずだ。【鳥谷越直子】