全米で大フィーバーを巻き起こしたエンゼルス大谷翔平投手(24)の2018年を、担当として密着した斎藤庸裕記者が振り返った。

日本からやってきた二刀流は、米メディアにとってもミステリアスな存在だった。

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米メディアのエンゼルス番記者たちは、大谷翔平という「人」にもひきつけられた。大谷が出場した試合後にはほぼ毎日、囲み取材が行われたが、「まだ(大谷の内面を)理解できていない」ということが番記者の共通した声だった。スポーツ専門メディア、ジ・アスレチックのファビアン・アルタヤ記者は「翔平はミステリアスだよ」と、シーズン終了後に渋い表情で振り返った。

メジャーで100年ぶりに誕生した二刀流選手に対する取材は、日本だけでなく米国メディアも過熱気味だった。百戦錬磨の記者たちにとっても、大谷のコメントから読み取れる本音や感情などはつかみどころがなかったようだ。エ軍の取材歴6年、野球記者歴17年のベテラン、地元紙オレンジカウンティ・レジスターのジェフ・フレッチャー記者はこう振り返る。

「何かこう一般的な、普通なことを言って(質問に)答えている気がするね。チームメートたちは彼のことをすごく面白くて、活発な人だと言っている。だけど、僕らがインタビューする時は、そのスイッチが切れるのかな(笑い)」

実際、第一印象から大谷を「面白い人」というエ軍の選手は多かった。もちろん、メディア対応でユーモアたっぷりな一面がかいま見えることもある。4月下旬、女房役のマルドナドとの関係について大谷が「ビジネスパートナーです」と切り返し、日米メディアを大笑いさせた。そんなやりとりがあるから、米国人記者たちを「もっともっと、彼自身のことを知りたい」と思わせるのだろう。

来季は2年目となる。フレッチャー記者は願いも込めて「これからはもう少し、取材を受ける時もリラックスしてくれたら良いね」と話した。内面に関する謎は残った一方で、野球選手・大谷の能力は疑いようがなかった。1年目のシーズンについて、両記者は「期待を大きく超えた」と声をそろえた。右肘の故障で登板数は限られたものの、二刀流に対する懐疑的な意見は消えた。フレッチャー記者は「今まで取材してきた選手とは(状況が)全く違う。見ていて、本当に楽しかったよ」と笑顔で振り返った。【MLB担当=斎藤庸裕】