MLBの開幕を目指して機構側と選手会の間で続いている交渉が、暗礁に乗り上げています。独立記念日の7月4日までに開幕日を設定していることもあり、6月1日からは「球史で最も大切な1週間」と言われていましたが、合意するどころか、行き詰まったまま、終わろうとしています。114試合の実施を目指す選手会に対し、大幅な年俸カットに取り組もうとするオーナー側は50試合を提案。両者の間の隔たりは、そう簡単には埋まりそうもありません。

交渉事ですから、最初からベストのオファーを出し合うはずもなく、駆け引きもあれば、折り合いを付けるポイントやタイミングもあるでしょう。米メディアの中には、日程と年俸面以外のロースターやプレーオフ枠の拡大などで大筋合意しており、双方が近日中に82試合前後で妥協点を見いだすとの楽観論もあります。

その一方で、正反対の声も聞こえてきます。

選手会のトニー・クラーク専務理事は4日、声明文を発表し、オーナー側の圧力に対してこれまで以上に強硬な姿勢を示しました。

「選手はフィールドに戻る準備ができている」としながらも、「選手だけでなく、家族の安全や健康にも影響を及ぼしかねない」と、今もなお感染拡大が続く米国内の状況を不安視しています。

一部のメディアやファンの中には、億万長者のオーナー陣と高年俸の選手たちが、金銭絡みでゴネ合っていることを厳しく批判する声もあります。長引く外出自粛生活に疲れ、1日でも早く野球をしたい、見たいという気持ちは、オーナー陣にしても選手にしても同じでしょう。ただ、家族を含めて生命の危険がある状況の中「ファンのために」という大義のもと、グラウンドに立つ選手の気持ちはもう少し理解されるべきでしょう。たとえ合意後、無事に開幕したとしても、プレーしないという選択をする選手も数多くいると言われています。

現時点で「最悪のシナリオ」は想像したくもありません。それでも、依然として1日1000人以上の死者が増え続け、一向に収束しそうにない米国にいると、楽観論だけに耳を傾けるわけにもいかないのが実情です。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)