FA制度が長く定着しているMLBだが、ファンにとっては特に新人時代から地元チームに所属してきた選手に自分たちの選手、自分たちと共に歩んできた選手、という愛着があり続けており、移籍すれば裏切られたと感じるようだ。そのことを改めて実感したのが、フィリーズのブライス・ハーパー外野手がワシントンに初めて帰還した2日のナショナルズ戦だった。

ハーパーは2010年のドラフトでナショナルズから全体1位指名を受けて入団。2015年にナ・リーグMVPを受賞し、6回オールスターに選出されるなどまさにナショナルズの顔となってきた。しかし昨シーズン終了後FAとなり、今年2月FAでは史上最高額となる13年総額3億3000万ドルでフィリーズと契約し、移籍したのである。

そしてこの日、フィリーズはナショナルズの本拠地ナショナルズ・パークでの2連戦初戦を迎え、ハーパーはビジターとして初めて古巣での出場を果たすこととなった。3番右翼手のハーパーが1回表に打席に立つと3万5920人の観客のほとんどを占めるナショナルズのファンは大ブーイングで彼を迎えたのである。やはり裏切り者という意識が強かったようだ。ナショナルズのエース、マックス・シャーザー投手によって三振を奪われると、スタジアムは大歓声に包まれた。

3回表の第2打席もやはりブーイングは続き、三振で大歓声というのも変わらなかった。

しかしそれで終わらないのがハーパーである。5回の第3打席では二塁打を放ち、フィリーズのベンチに向かってガッツポーズを見せたのだ。さらに6回の第4打席では左翼への単打で打点を挙げ、チームが6-0とリードを広げるのに貢献。

さらに8回の第5打席では右翼スタンド2階席に飛び込む2点本塁打まで放っている。この大活躍に数少ないフィリーズのファンはハーパーに「MVP」、「俺たちにはハーパーがいる」という叫びを上げていたということである。

試合後ハーパーは「ここに戻ってきてブーイングされることは少し違うように感じる。でも自分にとって、別の野球場に行って、マックスのような脚光を浴びている人やニューヨークに行ってブーイングを浴びながら対戦するのと同じだ。自分にとって同じだ。自分は試合でプレーすることを理解しているし、毎日自分を導いてくれるチームメートがダッグアウトにいることを理解している。毎晩私の後ろにはフィラデルフィアの街がある。それがあれば、関係がない」とあくまで今はフィラデルフィアが地元であることを強調していた。

それでもナショナルズのファンはハーパーに対して長く特別な意識を持ち続けるのだろうが。