昨年のワールドシリーズ王者レッドソックスが近年アメリカスポーツ界で恒例ともいえるものとなった議論に巻き込まれている。チーム分断の危機にさらされるかもしれない。現地9日に予定されているホワイトハウス訪問についてだ。

プロや大学のスポーツの主要優勝チームがホワイトハウスを訪問し、大統領による祝福セレモニーに参加するのは長年恒例行事となってきた。しかし、その伝統にひびが入ることになったのが2017年のドナルド・トランプ大統領の登場である。アメリカ第一主義を掲げ、人種差別的ともいえる過激な政策をとるトランプ大統領に反発する人々は多い。同時に支持者も多く、アメリカ社会はまさに分断された状況となっている。

そしてその分断が、ホワイトハウス訪問という伝統的行事にも影響を与えているのだ。訪問を拒否する、ホワイトハウス側からすると招待をしないチームや訪問に参加しない選手が続出する一方で、従来どおり訪問するチームもあり、その度に議論が起こる状況が続いているのである。

MLBでは2017年王者のアストロズは訪問したが、プエルトリコ出身のカルロス・コレア内野手とカルロス・ベルトラン外野手は参加しなかった。プロアメリカンフットボールNFLでは2016年王者でチームオーナーがトランプ氏の親友であるニューイングランド・ペイトリオッツは訪問したが、2017年王者のフィラデルフィア・イーグルスは訪問を拒否している。プロバスケットボールNBAでは2016-17年、17-18年と連覇したゴールデンステート・ウォリアーズは訪問していない、といった具合だ。

そして今回のレッドソックスだが、プエルトリコ出身のアレックス・コーラ監督を筆頭にムーキー・ベッツ外野手、ジャッキー・ブラッドリー・ジュニア、ザンダー・ボガーツ内野手などが不参加を表明している。特にコーラ監督はハリケーンで被害を受けたプエルトリコにトランプ大統領が対策をとらなかったことが理由だと公言した。

その一方で、リック・ポーセロ投手やクリス・セール投手、ブロック・ホルト内野手などは参加を表明している。

こうした状況に対し、スポーツ記者のスティーブ・バックリー氏がツイッターで「参加するのはホワイトソックス」と投稿、これをデビッド・プライス投手がバックリー氏のフォロワーが3万8000人であることにかけて「このツイートを3万8000人以上が見るべきだと思う」とリツイートし、チーム内で人種による分断が起きていることを示唆したのである。

チームが招待を承諾すべきでなかった、という意見も出ているなか、執筆時点では訪問は実施される見込みだ。果たしてその結果どのようなことになるか心配はつきない。