１０年前、２２歳の青年の決断が日本球界を揺り動かした。０８年９月１１日、社会人ＮＯ・１右腕だった新日本石油ＥＮＥＯＳ（現ＪＸ－ＥＮＥＯＳ）田沢純一投手（３２＝タイガース）が、日本球界を経ずに直接大リーグに挑戦する「直メジャー」を表明し、レッドソックスと３年契約を交わした。日本のドラフト１位候補の海外流出は初めてで、大リーグではセットアッパーの地位を築いた。

　田沢以降、ドラフト１位候補が直接大リーグ入りした例はない。「直メジャー」について大久保は「田沢は人の縁に恵まれた。（レッドソックスで）松坂君、斎藤隆君、上原君だったり。環境が大きかった」と言う。今回の大谷は日本で５年間技術を磨き、ポスティングシステムを利用して２３歳で大リーグに渡った。日本には同システムを認めない球団もあるが、有望なアマ選手にとって、リスクが大きい「直メジャー」より、大谷のスタイルが最短ルートと考えられても不思議はない。スカウトの中には「日本のアマ選手を直接獲得するという機運は、前より下がった」という声もある。