マリナーズのイチロー外野手(45)が21日、現役を引退するとマリナーズが発表した。公式ツイッターでイチローは「野球を始めた地でキャリアを終えられた。誇りに思う」などと心境を記した。

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イチローの寂しいセリフを聞いたのは、19年前の東京ドームだった。

「今日はもうね、サッカーの話でもしましょうか」と切り出してきた。

結果的に日本で、オリックスで最後のシーズンとなる2000年。開幕から4番を張り、球宴後でも夢のシーズン打率4割の可能性を残していた。お盆時期の日本ハム戦で、異例といっていいだろう、4万人を超える観客が集まっていた。確かイチローもチームもいいところなく、敗れた試合後のぶら下がり。何も聞くことがない…問いかけに窮する記者の困惑を読み取り、おどけてそう言ってきたのだ。「サッカーって君、そうもいかんわ」と無理やり野球の話題を振ってみたが、記憶にないくらい、もどかしい会話になった。

その後、2週間して脇腹を痛め、シーズン中の復帰は絶望的となった。FA権の取得は翌01年。神戸でリハビリに励むイチローを直撃し「来季もオリックス、FAまでメジャー封印を明言」を書いた。特ダネのはずが、そのオフにポスティングシステムを利用してのメジャー移籍を表明した。「あの報道のおかげで騒がれずに進められました」とイチローとオリックス首脳に感謝され、苦虫をかみつつ、大きな挑戦に胸を躍らせて天才打者を米国に送り出した。

19年間。想像以上の活躍で楽しませてもらったが、あの時はうまく返せなかった気の利いたセリフに返事をしたい。「まだ、サッカーの話をするのは早いんじゃねえの」。【99~01年オリックス担当=町田達彦】