GOSUKEがニューヨークに接近中! ヤンキース傘下の3Aスクラントンに所属する加藤豪将(ごうすけ)内野手(24)が、メジャー初昇格を待望される胸中を独白した。

名門ヤンキースは大砲スタントンら12人が負傷者リスト(IL)入りの緊急事態。17日(日本時間18日)にも本塁打を放つなど、ここまで3Aで4本塁打の加藤が近々、日本人59人目のメジャーリーガーになる可能性は十分にある。松井秀喜、イチローに続く名門3人目の日本人野手へ、主砲ジャッジと同期入団の若武者は今、千載一遇のチャンスを前に何を思うのか。【取材・構成=佐井陽介】

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小雨交じりの強風が痛い。ニューヨークから車で山間を200キロ走り続けて2時間30分。ペンシルベニア州スクラントンは4月中旬だというのに、気温0度を下回ろうとしていた。

「この2日間はもう少し暖かかったんですよ。と言っても5度ですけど(笑い)。僕はカリフォルニア育ちなので、最初は雪の中での野球に慣れるのも大変でした。毎日が勉強です」

加藤はそう苦笑いした。

13年ドラフトで日本人最高位指名から、苦節6年。今年はメジャーのオープン戦に初出場し、初昇格した3Aで開幕を迎えた。

「だんだん、ニューヨークに近づいているとは感じます。場所もチームメートも。ジオ(ゴンザレス)とかメジャー経験者も多いですし」

ヤンキースは現在、12人が負傷者リスト入りしている。16日には同僚フォードがメジャー初昇格。加藤のピンストライプ姿も夢物語ではなくなってきた。

「確かにチャンスです。ただ、今メジャーに上がっている3Aの選手が戻ってきたら、自分が2Aに戻る可能性もある。入団したてのころは『いつ上がれるか』と気にしていたけど、それは自分でコントロールできない。今年3割を打ったからメジャーに行けるという保証もない。どのカテゴリーにいても結果を出してチャンスを待つだけです」

開幕から11試合出場で打率2割7分8厘、4本塁打、11打点。巧守に加えて長打力アップも目覚ましい。「去年まではマイナー球。今年からメジャー球になって飛ぶようになった」。そう照れ笑いした後、ヤンキースGM付特別アドバイザー松井秀喜氏に感謝した。

「去年2Aトレントンで数回指導してもらいました。一番大きかったのが『構える際にグリップをもう少し捕手側に置いてからバットを引いてみたら』というアドバイスでした。去年の映像を見ると、頭のすぐ左隣にバットがあった。それをコーチ、アナリストと話して、松井さんの教えをベースに工夫をしたら、バットの引きをもっと取れるようになったんです」

金言をきっかけにスイングの強さが増し、3Aで4番も打った。それでも冷静に現状を見極め、まずはユーティリティープレーヤーとして生き残りを図る。

「4試合で三塁、遊撃、二塁、一塁を守ったり、打順も7番から4番、6番、3番と変わったり…。今はコーチが求める選手になりたい。どうすれば相手に勝てるのか、打席でもコーチと作戦を考えられる。そういう選手になりたいです」

日本中が大騒ぎしたドラフトから6年。7時間超のバス移動が日常。ハンバーガー1個にかじりつくしかない時期があった。成績が下の選手に先も越された。

身長188センチ。「何でも食べた。栄養なんて考えていられなかった」という努力の末、体重は入団時の81キロから89キロまで増加。たくましくなったのは体だけではない。何事にも動じなくなった精神力こそ、大舞台で武器になる。

▽加藤が、リーハイバレーとのダブルヘッダー第2試合で今季4号ソロを放った。「3番二塁」で出場し、相手先発から左中間へ3試合ぶりの1発。チームでは一塁手フォード(16日にメジャー昇格)の5本に次ぐ2位の本塁打数で、OPSは1・033の好成績をマーク。この日は本塁打を含む3打数2安打1打点とアピールした。

◆ヤンキースの負傷者リスト 野手は昨季38発の外野手スタントン、27発でエンゼルス大谷と新人王を争った三塁手アンドゥハー、同じく27発の中堅手ヒックス&遊撃手グレゴリアス、正捕手サンチェス、ベテラン遊撃手トロウィツキーが離脱中。投手も昨季19勝のセベリーノ、セットアッパーのベタンセスがリハビリ中。

◆加藤豪将(かとう・ごうすけ)1994年(平6)10月8日生まれ。米カリフォルニア州マウンテンビュー出身。両親は日本人。3歳で日本に移り、神奈川で生活。6歳で米サンディエゴに戻り、野球を始めた。ランチョバーナード高では主に二塁手で3度の州王者。13年ドラフト2巡目(全体66位)でヤンキースに入団。昨季は2Aトレントンで118試合出場、打率2割2分9厘、5本塁打、35打点。今季3Aスクラントンに初昇格した。188センチ、89キロ。右投げ左打ち。