セントルイスの野球ファンは「すごかった」。球場の雰囲気を表現するなら、エンゼルス大谷翔平投手(24)のこの言葉に尽きると思う。11年までカージナルスに所属していたアルバート・プホルス内野手(39)の凱旋(がいせん)シリーズとなった3連戦。ミズーリ州セントルイスのブッシュ・スタジアムは熱狂と感動に包まれた。

「アルバート、お帰り」。初戦の試合前、敵地の電光掲示板にこうメッセージがつづられた。球場内には今も、カ軍で活躍していた頃の写真や記事が飾られている。約7年半、ファンはずっとプホルスを待っていた。3試合で合計12打席、必ず打席前にスタンディング・オベーションが起こった。そのまま立ち上がって、プホルスの打席を見守る。カ軍時代にMVP3度、本塁打王2度、数々の功績を残した大打者へ対する最大限のリスペクトだった。

チームメートとして、ベンチからその光景を目に焼き付けた大谷にも感じるものがあった。「打つべきところでしっかり打って、やっぱりすごいなと。スターだなっていう、そういう風に見えた」。1戦目で全力疾走の内野安打、2戦目は本塁打、3戦目では2安打。4万5000人以上の視線が一点に集中する状況で期待に応えるプホルスの姿に、改めて感銘を受けた。

同じような雰囲気を地元記者が明かした。「3000本安打達成に近づいていた時のイチローへの歓声もすごかった」。敵チームであろうと誰であろうと、偉大な選手に対しスタンディング・オベーションで常に敬意を払う-。それがセントルイスのファンの特徴でもあるという。「人もすごかったですし、球場もかなりきれいで、人気や伝統も感じる」と大谷は言った。肌で触れた本場のベースボールは、大谷の記憶にもしっかりと刻まれたはずだ。