ヤンキース田中将大投手(31)が14日(日本時間15日)、本拠地ヤンキースタジアムで日米報道陣に対し、オンライン会見に応じた。4日(同5日)のフリー打撃で頭部に打球を受けて以来、初めて公の場で、いつもと変わらぬ笑顔を披露した。すでにキャッチボールを再開した一方、脳振とうの後遺症も懸念されるため、チームは慎重に復帰プランを進める方針。本当の勝負は、世界一をかけたポストシーズンとなりそうだ。

   ◇   ◇   ◇

いつもと変わらない、柔らかい笑顔が、順調な回復ぶりを物語っていた。球場内外とモニターを通した会見に臨んだ田中は、クリアな口調で現状を語った。現在は無症状。「今のところ、すべてがうまくいっている。慎重にやらなきゃいけないですけど、自分にとってはいいニュースだと思っています」。

4日のフリー打撃に登板した際、スタントンの時速112マイル(約180キロ)の弾丸ライナーが右側頭部を直撃した。「怖かったというより、アッという間に打球が飛んできてました」。反射神経の良さから無意識に避けたことで、大事にはいたらなかった。それでも、直後に「軽い脳振とう」の症状があったこともあり、開幕までの調整プランは大幅な修正を余儀なくされた。「1日1日、状況を見ながらですね」。患部が繊細な頭部だけに、必要以上に前向きな態度を取るわけにもいかなかった。

60試合の短期決戦となる今季。当初は、最後まで全力疾走するイメージもあった。だが、今回のアクシデントでスローダウン。田中個人としては、開幕ダッシュではなく、ラストスパートに切り替えるしかない。「1勝の価値は、ショートシーズンになればなるほど上がってくると思う。でも、マウンドに上がれば自分の投球をするだけ。力んでやろうとすれば、本来のスタイルからかけ離れてしまうことになりかねないですから」。すでに軽いキャッチボールを再開しており、次のステップはブルペン投球。それでも、焦るつもりはない。

静養中は、日本だけでなく、米国内の選手、ファンからも激励のメッセージを受け取った。「うれしい。幸せ。いい気持ちになりました。思ってくれている人たちのためにも、いいパフォーマンスをしたいという気持ちになりました」。本当の勝負はまだ先。災いを福に転じさせるうえでも、今は急ぐ必要もない。【四竈衛】