エンゼルス大谷翔平投手(26)の今季中の投手復帰が絶望的となった。前日2日の登板後に右腕の違和感を訴え、MRI検査の結果、右肘の屈筋回内筋の炎症でグレード1~2と診断された。投球再開まで4~6週間とされ、リハビリ期間を踏まえると最終戦の9月27日までに登板することは極めて厳しくなった。4日(同5日)から始まるマリナーズ3連戦には同行する予定で、状態に問題がなければ今後は打者で出場することとなりそうだ。

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投手として、心技体で歯車が合わなかった。大谷はキャンプ再開後に強い意気込みを口にした。「60試合なので最初から最後まで飛ばしていきたい」。だが、開幕3戦目の復帰登板が近づくにつれ、2つの感情が交錯し始める。「不安もありますし、楽しみもある」。公式戦となれば自然と投球の強度が上がる。手術明けで「どういう反応で(体に)返ってくるのか」が、常に頭をよぎっていた。

昨年オフからケガの再発を防ぐフォームにも取り組んだ。以前は右腕のテークバックの際に肘から上げていたが、球を持つ手から上げるように修正。肘への負担軽減を図った。だが、キャロウエー投手コーチは7月26日の復帰戦後、新フォームは完成に「近づいていると思う」と言った。つまり、未完成だった。

中6日の登板間の姿が、苦悩を物語っていた。キャッチボールを終えても納得がいかない様子で再びキャッチボールを始める。わずか1~2メートルの壁当てでも横から映像を撮り、フォームを確認した。2日の登板当日のブルペン投球前には、ステップして勢いをつけながら高めに大きく抜ける1球もあった。感覚はしっくりこない。それでも、公式戦で勝たないといけない。チームに貢献したい思いが強く、たとえ未完成であっても全力で腕を振った。

同僚やマドン監督ら周囲が驚くほどのフィジカルの強さがあり、パワーもある。その身体能力をいかに投球で発揮するか。登板中や登板間で修正や改善を重ねながらシーズン通して活躍する田中、前田、ダルビッシュらと、投手大谷を比べると、その差は否めない。

エプラーGMは開幕前、投打のどちらか1本にするべきと考えたことは「ない」と断言した。「彼ができるなら、やらせたい」。だが昨季と同様、打者に専念せざるを得ない結果となった。二刀流を継続するには、投手としての“能力”ではなく、シーズンを通して勝てる投球が“可能”であることを証明しないといけない。打者で通用することは証明している。ならば、集中すべきは投手大谷を完成させること。まだ26歳。発展途上なだけに、可能性は大いにある。【MLB担当=斎藤庸裕】