ヤンキース田中将大投手(31)が7日(日本時間8日)、敵地でのレイズ戦に先発。5回1安打無失点無四球5奪三振と、完璧な投球を披露した。初対決となったレ軍筒香嘉智外野手(28)を一邪飛、中飛に仕留めるなど、打者16人で許した走者は1人だけ。意図的に高めの直球を使う攻撃的なスタイルで、打球の頭部直撃からの完全復帰へまた1歩近づいた。

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調整途上を感じさせないほど、田中は力強く緻密だった。許した走者は、1回2死からの安打だけ。設定された60球に満たない59球で5回を投げきった。「ここまでうまくいってくれたのは、ちょっと驚きがありました」。4日の頭部打球直撃から2試合目で順調な回復ぶりを披露した。

59球中、ストライク44球(75%)。ゾーンの中で封じ込めた。09年以来11年ぶりにワインドアップに戻し、球威と躍動感が増した。「シンプルに、あれこれ考えず、気持ち良く投げようと」。昨季まで各球団でサイン伝達が常習化していたこともあり、ノーワインドアップ時にはグラブの位置、角度などを入念にチェック。“シンプル”には程遠かった。

球種の使い方にもバリエーションを加えた。近年「バレルゾーン」の考え方が浸透し、アッパースイング気味の打者が急増。「基本は低め」が絶対的なセオリーではなくなった。手足の長い外国人の場合、弱点は外角低めよりも内角高め。臆することなく、最速150キロの速球で内角、高めを突いた。

初対戦となった筒香に対しても、第1打席はインハイ直球で一邪飛。一転して第2打席は、外角へのスライダーとスプリットで中飛。格の違いを見せた。「2打席目は捉えられていたし、アウトになってラッキー。長打になってもおかしくなかった。これからもいい対戦をしていきたいですね」。同地区のライバルで今後も対戦機会が予想されるだけに、高いモチベーションとなる。

次回も球数限定となる見込みだが、焦りはない。「いつも通り自然体でいこうと思ってました。その中でセルフコントロールができて、強弱をつけられました」。異例ずくめのシーズンでも、田中が自然体を維持すればヤ軍は上昇気流に乗る。【四竈衛】

▽ヤ軍ブーン監督 60球がメドだったから3、4回までと思っていたが、グレートだった。スプリットもスライダーも良かったし、制球が秀逸だった。またいいステップになった。