試合巧者のレイズが、盟主ヤンキースを大きく突き放して10年ぶりに激戦区を制した。短期日程とはいえ、今季はヤ軍相手に8勝2敗。1点差試合はメジャートップの13勝5敗と、際立つ勝負強さで異例のシーズンを乗り切った。その強さの秘密に迫る-。

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潤沢な資金で大物FA選手をかき集めたわけでもなく、スーパースターが居並ぶわけでもない。スモール・マーケットの代表とも言えるレ軍躍進の陰に、今や策士として知られるようになったキャッシュ監督の手腕があることは言うまでもない。現役時代、控えの捕手としてさほど目立たなかった同監督は、常識にとらわれることなく、選手を適材適所で自在に操り、白星を重ねてきた。

かつてV9を遂げた巨人のように、強いチームの理想は「9人野球」と言われることもある。だが、今季のレ軍に不動のレギュラーは存在しない。スタメン、打順とも目まぐるしく変わる。前日に、主軸として決勝弾を放った選手が、翌日に下位打線やベンチスタートとなることなど珍しくない。筒香だけでなく、選手全員が、データに基づき、相手投手によって上位、下位にちりばめられる。筒香が「意味のない打順はない。レイズというチームは、僕はそう思います」と言い切るように、主軸と控えの差がない。実際、23日時点で12人の野手が30試合以上、10人の野手が100打席以上、プレーしてきた。

投手起用にしても、常識を覆してきた。2018年に救援投手が先発し、ローテ投手へつなぐ「オープナー」を発案した同監督は今季、クローザーを流動的に起用した。アンダーソンとカスティーヨの2人を軸に、1973年のレンジャーズ以来となる12人がセーブを記録。同監督は「うちには多くの才能がある」と話す一方で、救援陣全員に自覚と責任を与えてきた。

定位置にあぐらをかくこともなければ、控えに甘んじることもない。投打とも、メンバーが入れ替わっても戦力ダウンしない。その結果、チーム内に競争意識が芽生え、一体感を生む。固定観念のないレイズ野球は、弱者の論理からスタートした究極の全員野球と言っていい。【四竈衛】

<レイズ中心選手の今季打順と守備位置>

チーム最多の13本塁打を放つ中軸のローは今季、6つの打順で先発出場。主に二塁を守るが外野の両翼も12試合守った。今季加入した強打のレンフローは1~9番すべての打順を打った。守備は主に右翼だが、23日の試合ではメジャーで1度も経験していなかった一塁に途中から入った。長年チームの中心として活躍するキアマイアーも今季は4番以外すべて経験。チームの首位打者であるウェンドルも4番以外すべて打ち、内野3ポジションをこなす。