イチロー・新庄 日本人野手メジャー初激突/復刻

2002年3月10日付日刊スポーツ紙面

<日刊スポーツ:2002年3月10日付>

 プレーバック日刊スポーツ! 過去の3月10日付紙面を振り返ります。2002年の3面(東京版)は、イチロー・新庄 日本人野手メジャー初激突でした。 

 ◇ ◇ ◇

 【スコッツデール(米アリゾナ州)8日(日本時間9日)】日本人野手の初競演にアリゾナが沸いた。マリナーズ・イチロー外野手(28)とジャイアンツ新庄剛志外野手(30)が、スコッツデール球場でのオープン戦でメジャー初対戦。試合前、ボンズを「仲介役」に再会を果たした2人は、ともに1番で先発出場した。1回表、イチローが中前打で貫録を見せると、その裏には新庄が左翼線への二塁打で応戦。1万1225人の観衆は拍手喝さい。2人の日本人野手がメジャーの歴史に新たな1ページをしるした。

 野球史を飾る1ページにふさわしい光景だった。試合開始11分前の午後0時54分。二塁後方でイチローと談笑していたボンズが、一塁後方で素振りを繰り返していた新庄を呼び寄せた。笑顔で新庄が駆け付け、ボンズはその場を2人に譲るかのようにベンチへ引き揚げる。ナ・リーグMVPに輝くこと4度のスーパースターを仲介役に、新庄とイチローは互いの拳をぶつけ合い「メジャー初対面」を祝した。

 イチロー「ジャイアンツはどうなの」

 新庄「シアトルのチームは、いい雰囲気?」

 絶えない笑みの中で、たわいない会話が続く。新庄の大げさなジェスチャーに、イチローが手をたたいて爆笑するシーンもあった。時間にして、わずか70秒。別れ際にあいさつを交わした2人の顔は、再会を果たした喜びにあふれていた。

 気持ちの高ぶりは、すぐにプレーの集中力へとつながる。1回表、いきなりイチローが見せた。エルナンデスの低めに落ちるカーブを、新庄が守るセンター前にはじき返した。昨季のアMVP男に貫録の一打を見せつけられ、新庄も燃えた。その裏だ。昨季17勝右腕アボットの高めに浮いた90マイル(約144キロ)直球を強振。左翼線への二塁打で応戦した。日本人リードオフマンの競演を、超満員1万1225人の拍手喝さいが包み込んだ。

 戦いを終え、クールなイチローが熱い言葉を口にする。「去年、野茂さんとやった時もそうでしたけど、初めがなければ2回目はないわけですから。そういう(日本人野手の対戦)経験ができることは、素晴らしい。将来的に特別じゃなくなる日が来るかも知れませんけど、今日がその初めての日ですから。そこに自分がいることは、素晴らしいですね」。新庄も「楽しかったです」と、ゆっくり吐き出した短い言葉に深い感慨を詰め込んだ。

 メジャーで初めて実現した日本人野手の対戦。オープン戦とはいえ、海を越えて戦う男たちの真っ向勝負に、本場のファンが酔いしれた。幾度も修羅場を経験してきたイチローと新庄にとっても、いつまでも記憶に残る1日となったに違いない。

 ◆日本人大リーガー同士の対決

 公式戦の投手同士では97年6月18日の野茂(ドジャース)と長谷川(エンゼルス)が最初で、野茂が先発、長谷川は救援(ともに勝敗関係なし)だった。先発対決は99年5月7日、伊良部(ヤンキース)と鈴木(マリナーズ)が最初で、伊良部が勝利投手、鈴木が敗戦投手になった。投手対打者は、昨年4月13日に長谷川がイチロー(マリナーズ)と初対戦し、イチローが遊撃へ内野安打を放った。

※記録と表記は当時のもの