ダルビッシュ世界一逃し涙 今オフFAも残留示唆

涙をうっすら浮かべ会見するダルビッシュ(撮影・菅敏)

 ダル、マエケン、世界一ならず-。ワールドシリーズ(WS)第7戦が行われ、ドジャースがアストロズに敗れ、29年ぶりの世界一を逃した。先発ダルビッシュ有投手(31)が1回2/3を5失点でKOされ、打線の反撃も及ばなかった。前田健太投手(29)は、登板しなかった。ア軍は1962年の創設以来、56年目で初のWS制覇となった。

 歓喜に沸くアストロズナインの姿を、ダルビッシュはベンチの最前列で、しっかりと目に焼き付けた。「失望というか、自分の引き出しが足りなかったのがすべて。これはしばらく自分の中に残るでしょうけど、しっかり糧にできるようにしたいです」。試合後の会見では、赤みがかった両目を正面に見据えたまま、悔しさを口にした。

 立ち上がりからつまずいた。1回表、わずか4球で1点を先制され、盗塁、内野ゴロで、さらに2点目を失った。2回表はスプリンガーの2ランなどで3失点。わずか5アウト、47球で、ダルビッシュの2017年は終わった。

 49球でKOされた第3戦の反省を生かせなかった。前回登板後、滑るといわれるWS球への対応を進めたものの、万全には程遠かった。「ストライクを投げるレベル。打者を圧倒できるところまで引き上げることができなかった」。ダルビッシュ降板後は、第5戦で先発したカーショーが中2日で3回から救援。追加点を許さなかったものの、ダルビッシュの5失点はあまりにも重過ぎた。

 トレード期限直前に移籍して以来、ド軍に愛着も湧き始めていた。「いろんなことをしていただいたので本当に感謝しかない。最後にWSで足を引っ張ってしまって。恩を返したかったのが…すごく残念です」。今オフ、FA(フリーエージェント)となるため、来季以降の新天地は未定。その一方で、素直な胸の内ものぞかせた。「WSに出て活躍したいという目標になった。そういうチャンスのある球団がベスト」と話した後、数秒間、間を置き、「自分はドジャースでやり返したいです」と続けた。

 「世界一請負人」の役割は果たせなかった。だが、米球界全体が、屈指の能力と存在感を再認識した。争奪戦が確実視されるダルビッシュが、今度は「オフの主役」としてスポットを浴びる。【四竈衛】

 ▼日本人投手のワールドシリーズ(WS)先発は3度目。07年松坂(レッドソックス)がロッキーズとの第3戦に勝ったが、ダルビッシュは今年の第3戦に続き黒星となった。先発して1回2/3は日米の公式戦、ポストシーズンを通じ06年7月29日ソフトバンク戦、前回第3戦に続きプロ最短降板。奪三振なしは前回第3戦に続き渡米後2度目だった。

 ▼ダルビッシュ、前田が世界一を逃した。過去にWSで出場登録された日本人投手は98年伊良部(ヤンキース=登板機会なし)07年松坂、岡島(ともにレッドソックス)13年上原、田沢(ともにレッドソックス)とすべて世界一になっており、敗退したのは初めて。