大谷翔平10戦終え2勝&3発 早くも米球界の中心

7回表アスレチックス2死二、三塁、オルソンを三振に切り雄たけびをあげる大谷(撮影・清水貴仁)

 本拠地スタンドは熱狂に包まれ、圧倒的な奪三振ショーに酔いしれた。エンゼルス大谷翔平投手(23)が、本拠地初、メジャー2度目の先発マウンドに上がり、7回1死まで完全投球を繰り広げた。1安打1四球を与えたこの回のピンチもしのぎ、7回を91球、1安打、12奪三振、無失点。打者では3試合連続本塁打中だが、「投」でも2勝目を挙げ、10試合を終えて早くも米球界の話題の中心になった。

 スタンドの歓声が爆発するのと同時に、大谷はグラブをたたいてほえた。メジャーに来て初めて、感情をむき出しにした。7回2死二、三塁。5番オルソンから狙って三振を奪った。「(スプリットが)一番いいところにいってくれた。期待に応えることが、ちょっとでもできたんじゃないかなという、うれしさは感じています」。総立ちのファンが待つ、三塁側ベンチへ歩みを進めた。

 地元ファンは、大谷の背中に夢を見た。3戦連発の衝撃から2日。日本から来たヒーローは初めて、本拠地のマウンドに上がった。1回、ジョイス、セミエンを連続三振に仕留め、続くローリーを2球で追い込むと、膨らんだ期待感は大声となってスタジアムにこだました。「何となく抑えられる雰囲気を球場全体につくってもらっていた」。87マイル(約140キロ)のスプリットで3者連続三振。5回にも3K。走者を1人も許さないまま、奪三振だけが増えていった。

 夢が現実になりかけた7回1死。セミエンに96マイル(約154キロ)直球を左前に運ばれた。一瞬の静寂。だがすぐに、大きな拍手が大谷に届けられた。続くローリーに四球を与え「今日よくなかったところ」と反省したが、7回1安打無失点で2勝目。最速も99・6マイル(約160キロ)をマークした。

 開幕10試合を終え、2勝&3本塁打。「調整はいたってスムーズ」と言うが、アップ中からボールを手放さず、指に息を吹きかけて慣れないMLB球へ対処している。前日7日(日本時間8日)は、野球を題材にした93年の米映画「サンドロット」のイベントで、出演者が来場。トラウトら同映画を見て育った選手たちは、一緒に写真に納まろうと控室に向かったが、映画を知らない大谷はその輪を離れた。「みんなミーハーだな」とポツリ。気さくな仲間には囲まれているが、やはり文化も環境も違う。細かな部分で、自分が「外国人」であることを感じる。

 だが規格外の才能で、グラウンドでは米ファンを魅了している。「1回1回、期待を裏切らないような活躍ができるようにしたい。毎日そのために練習している」。驚いてもらっては困る。伝説は、まだ始まったばかりだ。【本間翼】