あす開幕イチローレーザービームも満足できない理由

巨人対マリナーズ 3回裏巨人無死二塁、田中俊の右飛でイチローは三塁に素早く送球し、二塁走者ゲレーロの三塁進塁を阻止する(撮影・黒川智章)

<プレシーズンゲーム:巨人5-6マリナーズ>◇18日◇東京ドーム

マリナーズ・イチロー外野手(45)が開幕スタメンを確定させた。巨人とのプレシーズンゲーム2戦目も「9番右翼」で先発出場。3回の守備で代名詞のレーザービームで強肩健在を証明した。一方で打撃は3打数無安打で米国からのオープン戦を通じて24打席連続ノーヒット。攻守に明暗が分かれるが、試合後にサービス監督は20日のアスレチックスとの開幕戦(東京ドーム)のスタメン起用を明言した。平成のヒーローが大舞台に戻ってくる。

肉体に授かった武器に衰えはなかった。3回無死二塁の守備。定位置への右飛が上がり、二塁走者のゲレーロにスタートの構えを見せられる。イチローが捕球から、よどみない動作で代名詞の「レーザービーム」を発動させた。三塁手の胸にノーバウンドで完璧なストライク投球が収まった。俊足ではないゲレーロは結局、自重。飛距離的に俊足でもセーフは難しい。差し引いても、場内の熱は2日間で最高潮に達した。

ゲレーロ、そして原監督から拍手を送られた。「ゲレーロは見えたけど、原さんは全然分からなかった。うれしいですね」。だが理想ではない。「フォーシームで握れてない。合っていれば、もっと掛かった球が行くけど。望みすぎですかね」と、久々の機会をひもといた。

だからこそ、肉体からスイングまでを一体化させなければならない打棒が色あせて感じる。3回の第1打席。坂本工に2-2からの5球目、前日から通算18球目で初めての変化球となるチェンジアップが外角低めへ。崩されながらファウルでしのぐ。だが続くインハイへの143キロ直球に鈍い音の一ゴロ。4回は左腕戸根の荒ぶる直球を顔の高さに揺さぶられ、最後は外角低めスライダーに腰くだけた。かつて体勢が崩れても人知を超えたスイング軌道で安打にした。メジャー19年目を迎える45歳は、現状でバットを始動させられず、見逃し三振に終わった。

3打席目も中飛で3打数無安打で交代し、24打席連続無安打。それでもサービス監督は「もちろん先発。第1戦は先発で、そこからどうなるか見たい。攻撃はあまりいい形ではないが、わずか数日間で良い方向に持って行けるのがイチロー」と2年連続14度目の開幕戦スタメンを与えた。

凱旋(がいせん)会見で「僕にとっては大きなギフト。だから一瞬一瞬を刻み込みたい」と話した。巨人戦の記憶は大切にしまった。「すごい空気よくてね。ヒット1本打ちたかった。残念でしたね。ジャイアンツファン、ちょっとというか、すごい好きになりましたね」。後は心を整えて、待つ。「始まってしまうという感覚はないですね。勝手に(気持ちは)高まるから」。開幕戦で次なるヒットは日米通算4368安打目。英雄からの贈り物をみんなが待ちわびている。【広重竜太郎】

◆イチローの連続打席無安打 大リーグのレギュラーシーズンではマーリンズ時代の15年に記録した34打席がワースト。次いで25打席、24打席が各1度ある。オープン戦では08年に26打席があった。日本での最長は99年5月の17打席。

◆イチローのレーザービームVTR メジャー1年目の01年4月11日、敵地でのアスレチックス戦。右翼で先発出場したイチローは8回1死一塁から右翼への安打を捕球。三塁を狙った一塁走者を確認すると力強い正確なノーバウンド送球で三塁補殺。シアトル向けの中継ラジオで実況のリック・リズ氏は「レーザービームのようなストライク送球。ワオという以外、言葉が出ません」と絶叫。これがスポーツ局ESPNを通じ全米に流され日本でも話題となった。