目先の1勝だけを見ない菊池 胸にイチロー氏の言葉

エンゼルス戦に先発し、力投するマリナーズ菊池(撮影・菅敏)

<エンゼルス5-6マリナーズ>◇20日(日本時間21日)◇エンゼルスタジアム

マリナーズ菊池雄星投手がデビュー6戦目でメジャー初勝利を挙げた。

待望の初勝利の味は、確かに格別だっただろう。だが、この日の苦しい投球内容もあっただろうが、大はしゃぎするような菊池ではなかった。これまで勝利投手の権利を得て交代しながら、白星が消えても、冷静に同じ言葉を繰り返してきた。「信頼を得られるような投球をしていけば、自ずと勝ち星は付いてくると思う」。目先の1勝だけを見ない姿勢の裏には、引退したイチロー氏の言葉があった。

3月21日の東京ドーム。日本で引退したイチロー氏とベンチ前でハグを交わした際、菊池が号泣した光景が日米両国で話題を集めた。その一方で、菊池は大先輩の声をひとときも忘れていない。「頑張れよ」。シンプルなひと言には、長年メジャーの第一線で体を張ってきたイチロー氏ならではの重みが込められていた。

キャンプインから引退までわずか2カ月間。「イチローさんとプレーできることが最高のギフト」だった菊池にとって、すべてが珠玉の言葉だった。特に印象に残っているのが、「1年目から結果を出すこと」だった。鳴り物入りで移籍すれば、期待値も重圧も大きい。つまり、周囲を納得させるためには、結果しかない。デビュー年に首位打者、新人王、MVPを獲得したイチローは、3年目を迎えた当時、「3年やってナンボ」と自戒の思いを口にした。

今年の来日会見では、菊池に対し、同じ「3年スパン」で期待を込めた。

「その年のエースは毎年生まれるけど、3年やってチームのエースになるのはなかなかできることではない。雄星にはその力があることはみんな感じている。まずはしっかり3年結果を残してほしい」。

ようやく手にした初勝利。真価が問われるのは、継続できるか、否か-。イチロー氏の言葉を胸に、菊池がまた新たな1歩を踏み出した。【MLB担当=四竈衛】