最短KOの大谷は投手調整を優先すべき/上原浩治

大谷に歩み寄る捕手のカストロ(ロイター)

<アスレチックス6-4エンゼルス>◇26日(日本時間27日)◇オークランドコロシアム

二刀流の完全復活へ、試練が待ち受けていた。エンゼルス大谷翔平投手(26)が、アスレチックス戦で1回途中3安打5失点3四球で今季初黒星を喫した。1死もとれずにプロ最短KO。わずか30球、ストライク15球で直球の最速は94・7マイル(約152キロ)だった。

18年10月に右肘の内側側副靱帯(じんたい)の再建術(トミー・ジョン手術)を受け、19年9月には左膝を手術。度重なるケガを克服し、たどり着いた復活マウンドは18年9月2日以来693日ぶりだったが、打者と勝負する以前の状態のまま終わった。日刊スポーツ評論家の上原浩治氏(45)が大谷の投球を分析。上半身と下半身のバランス、左肩の開きなどフォームの課題を指摘した上で今後の展望を語った。

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ケガから復帰した大谷が、投手として久しぶりに公式戦のマウンドに立った。結果は…。わずか30球で3四球の5失点。先発して1死も取れずの降板は、生まれて初めての体験だったのではないだろうか。

投球内容を振り返ってみる。初球は外寄りの真ん中低めに直球を投げてストライク。球速は92・5マイル(約149キロ)だったように自分の感覚を確かめるように手探りで投げていた。そして2球目93・5マイル(約150キロ)の直球がど真ん中に入り、中前打。打たれたとはいえ、現段階で150キロを投げられるのは「さすが」だが、上半身と下半身のバランスが悪い。左肩の開きが早く、明らかに腕が振り遅れていた。だからシュート回転して打者が嫌がるような直球を投げられない。それを何とかしようとすると、今度は引っかけての低めのボール球となる悪循環。本来の直球が投げられなかったからだろうが、大谷も首を振って変化球を投げていたように、捕手の配球も変化球が多くなった。

故障明けの投手にありがちなのは、頭でイメージするフォームと実際に投げているフォームが違ってくること。頭で大丈夫だと思っていても、体が勝手にケガをした箇所をかばってしまう。「怖さ」が抜けるまでは、それなりの実戦経験が必要。これはブルペンで投げているだけでは消しきれない。大谷は開幕前に3度、実戦登板している。徐々に四球は減っていたが、まだまだ本来の出来ではなかった。患部への不安を完全に拭い去っていたとしても、本番のマウンドでは違うのだから、現状で自分のイメージ通りに投げられるはずがない。それで抑えられるほど、メジャーの打者は甘くなかった。

今後、どう調整しなおしていくのか、見守るしかない。手術明けの「投手」が、どう調整していくのかなら、ある程度は想像できる。しかし大谷は「二刀流」。本来なら今回の登板は「実戦の感覚」を肌で感じられただけでも収穫とも言えるが、次回の登板まで野手として試合に出るのなら、どうやって修正していくのか分からない。「二刀流」の難しさだろう。

個人的に思うのは、実戦投球メドが立つまで投手としての調整を優先するべきだと思う。今更、言うまでもないが、野球選手のトレーニングは、野手と投手で異なる。上半身のトレーニングでも、投手は肩や肘の関節部分の細かな筋肉を鍛えたり、思い切り腕を振って投げるために、それを保護する筋肉をメインに強化する。スローイングでケガをしないために野手もやった方がいいとは思うが、バットを振るために必要な筋力強化を主目的にしたトレーニングとは違う。メジャーでも日本でも、投手と野手が分かれて練習するのは、パフォーマンスを上げるために必要な筋肉が違うから。トレーニング方法だけでなく、打撃理論や投球理論も、どんどん緻密になっているのが現代の野球。両立させていくための正解は誰にも分からないと思う。

大谷は困難を承知で「二刀流」を選び、チームも協力している。ただ、それが許されるのは、チームが少しでも多く勝つために必要な最善策だという大前提があるから。それを証明するためには、結果を出すしかない。投手・大谷として完全復帰して「二刀流」ができることを証明してほしい。(日刊スポーツ評論家)