小泉進次郎環境相とレッズ秋山が「横須賀会談」/上

愛用していスカジャンを身にまとい笑顔を見せるレッズ秋山(左)と小泉環境相(撮影・菅敏)

小泉進次郎環境相(39)と、レッズ秋山翔吾外野手(32)の初対談が実現した。日本の次世代を担う政治家と、今季からメジャーに挑戦した希代のヒットメーカー。異なる世界で挑戦を続ける2人だが、ともに神奈川・横須賀出身で小学校時代には同じソフトボールの「大池リーグ」に所属していた。横須賀愛が深く結びつける“同志”の「横須賀会談」。3回連載の第1回は、野球から家族のことまで語り合った。【取材・構成=斎藤庸裕、栗田成芳】

進次郎(以下、進) こんなに誇らしいことはないですね。デビュー戦、今まで名だたる日本人選手のデビューってワクワク、その日を楽しみにしていたけど、全く違う心境でしたね。家族を見守るというかね。

秋山(以下、秋) 家族を見守るような、という言葉、すごく響いています。

20年7月24日、本拠地でのタイガース戦。秋山はメジャー初打席で中前へ初安打&初打点をマークした。

進 あのセンター前、ちょっとタイミングが合わないながらも、食らいついて持っていった。崩されながら、ちゃんと1本出した。さすがだなと思いました。

秋 今季の成績としては、皆さんに届けられるようなものではなかったんですけど、メジャーに挑戦したことを伝えられたのは、すごく良かったと思います。

メジャーリーガーと政治家の“横須賀会談”。郷土愛が、2人を結びつけた。

進 僕が秋山君を知ったのは、プロ野球に行った時。知り合いから「西武の秋山翔吾くんって、横須賀出身なんだよ」って。しかも小学校の時に自分が入っていたリーグから。一気に親近感が湧いて。特別な思いがありますね。

秋 同じチームの先輩ではなくても、同じリーグで戦って、同じ景色を見ていたんだと。そうだったんだって思ったのは、よく覚えてます。

少年時代の大池リーグでは秋山が後輩も、ある話題で立場が逆転? する。

進 (対談前に)初めて家族で会わせてもらったけど、いやー、4歳と6歳、自分の子どもの成長も見ているけど、お母さん、大変だよね。

秋 そうですね。でも進次郎さんの家庭であれば、あそこまで大変にはならない(笑い)。

4、6歳の息子がいる秋山。今年1月に第1子の長男が誕生した新米パパの進次郎氏。ここまでは進次郎氏が話をリードしてきたが、お互いにとって子どもの存在の話題となると…。

進 これは先輩パパからいきましょう。

秋 恐縮ですけど…。子どもってこんなに早く切り替えができるんだなって。僕に足りないところだなって感じさせてもらっている。泣いてたのに急に笑ったり、笑っていたのに、いきなり泣きだしたり。うまい切り替えができているというか、バッティングの話になってしまうんですけど、子どもにヒントをもらった感じはあります。

進 すごく分かるね。やっぱり(仕事で)ストレスもたまるし、嫌なこともある。ぶつかる時もある。でもすっきりしない気持ちになっても、切り替えなきゃいけない。「よし笑顔を出そう」という時に思い浮かべるのは息子の顔。僕はすごく救われているなと。

2人の、息子を見守る目は、温かい。

秋 アメリカに連れて行っても、ためらいとかないんです。英語をしゃべるにしても。彼らが本能的にやっているのを見て、自分に生かさせてもらっている。これくらい、僕も選手に対してしゃべっていこうと。

進 育児と仕事の両立の中では基本、寝不足になるわけですよ。でも今までいっぱい経験している寝不足の中で、一番価値があると思える寝不足。間違いない。容赦なく起こされても自分がやることやらないと。分かるでしょ?(笑い)

子どもの存在の大きさ-。進次郎氏の声のトーンが上がった。

進 本当に、結婚して子どもができて、こんなにも見えてない世界があったんだなって痛感しました。今までも保育士さんとか、子どもを見ている仕事の方って本当にすごいなと思っていたけど今、すごいなっていう感覚の次元が違います。本当に心から尊敬するし、こういう子育てを支えてくれる方々の存在が、本当に重要だなと思いますね。

ともに男の子。野球選手になる可能性もある。子どもの将来には…。

秋 野球を好きでいてほしいとは思いますけど、野球選手になってほしいということは思えない。父親がまがりなりにもメジャーリーガーになって(子どもへの)目の向けられ方はきついと思う。それでも、好きでプロになりたいと言ってくれれば、もちろん応援します。

進 特定の何かになってほしい、というのは全くなくて、一番は、何か好きなものを見つけてほしい。時々例えで出すのは、さかなクン。

秋 分かりやすい!

進 これが好きって思いを向けられることを見つけてくれれば。すごく思うのは、この子にとって「これだ」っていうのは分からないから、とにかくいろんな経験をさせてあげようと。それを心掛けたい。

秋 何をやるにしても、突き詰めてやってもらいたい。その上でやめるのは仕方ないかなと思えるので。その時に何か言葉をかけられる親でありたいですね。

進 秋山君の言うとおりでね。自分もオヤジが政治家だからって、とりあえずでやっていたら、精神的につぶれているよね。

秋 (政治家の仕事には)すごい決断があると思いますし…。

進 父は子どもの頃から「お前たちは政治のことを考えなくていいから」って。それで自分で選んじゃうんだから。分からないよね~。「お前はいいから」って言われて、その通り芸能界に入ったのが兄(孝太郎)だった(笑い)。本当良かったと思うのは、親が総理で誰もが知っていて、その道に行くことを僕が自分で決断できたということ。

秋 それくらい意志が強い、そういう子どもになってくれたらうれしいなと思いますね。

2人が見つめてきた父の背中は、大きかった。

進 向き不向きとかではなく、親をどう見ていたか。親が自分にどう接してくれていたか。政治家うんぬんを抜きに、親に愛されている感覚を持てない環境だとしたら、同じ世界に行こうとは思えない。寂しさを感じることなく、愛情を注いでくれたこと、これが全てだと思いますね。

秋山の父肇さんは、自身が小学6年生の時、がんのため他界した。

秋 野球選手にしたいって思いがあったんだと思います。お金や自分の休みも使ってくれて。だから、野球に対して中途半端なことをしちゃいけないって思いはずっとあります。

コロナ禍が続く中で、家族と過ごす時間は増え、親子の関わりも強くなる。

進 僕は単純に、ほんっとに息子に感謝している。生まれてきてくれてありがとうと。生まれたのは1月17日なんですね。日本で(コロナの)初感染が確認されたのが16日。その後、緊急事態宣言もあって。その中で、どれだけ息子の存在に救われたかと思います。

秋 彼らがいてくれて、妻も含めて、癒やし、やすらぎはもちろんある。本当、感謝したいですね。子どもたちはまだ、成長段階で(現状の)全てを受け入れて生活するのって、かなり難しい。でも後々、いろいろな面で、意味のあることになると思う。

前を向いて-。家庭内で問題が生まれることもあるが、同時に感謝を示す機会にもなりうる。

進 年齢がいけば、オヤジに面と向かって「ありがとう」って照れくさくて言えない時期ばっかりですよ。だけど絶対(親は)「生まれてきてくれてありがとう」って思って見ていたんだよと。このことは(皆に)伝えたいですね。

秋 お互いがお互いを理解し合う、思いやるようなものになってくるんじゃないかなと思うので。良い方向に、日本も、世界的にも進んでくれるといいなと思います。

コロナとの闘いだった20年。進次郎氏はメジャーの舞台に立った秋山を独特の“進次郎節”で、ある職業に例えた。(つづく)

※対談は2020年12月20日に新型コロナウイルス感染防止策を講じて行いました。

○…対談前には当初、横須賀市内で野球教室が行われる予定だったが、コロナ禍を鑑みて中止となった。秋山はせめてもの記念にと、レッズカラーの赤に自身の打撃フォームのシルエットが配されたオリジナルマスクを、参加予定だった約80人の子どもたちに関係者を通じてプレゼント。「子どもたちと交流したかったですが、安心安全が第一なので」と話した。

◆秋山のメジャー初打席VTR 7月24日、タイガースとの開幕戦は先発から外れ、6回2死一、二塁で代打で登場。2番手右腕シスネイロに対し、カウント1-2からファウルで粘って6球目、96マイル(約154キロ)の外寄り低めの速球をゴロで中前に運び、初安打、初打点をマークした。1年目の成績は打率2割4分5厘、9打点と満足のいく結果ではなかったが、9月は月間打率3割1分7厘、出塁率4割5分6厘でチームの7年ぶりポストシーズン進出に貢献した。

◆秋山翔吾(あきやま・しょうご)1988年(昭63)4月16日、神奈川県横須賀市生まれ。横浜創学館-八戸大を経て10年ドラフト3位で西武入団。15年にシーズン216安打のプロ野球新記録。首位打者1度、最多安打4度。NPB通算1207試合、116本塁打、513打点、打率3割1厘。19年オフにFAでレッズ入り。メジャー1年目の今季は54試合で0本塁打、9打点、打率2割4分5厘。15年プレミア12、17年WBC日本代表。183センチ、86キロ。右投げ左打ち。

◆小泉進次郎(こいずみ・しんじろう)1981年(昭56)4月14日、神奈川県横須賀市生まれ。米コロンビア大大学院修了。父小泉純一郎元首相の秘書を経て、09年衆院選で神奈川11区で初当選。19年に環境相に就任。20年に再任。兄は俳優小泉孝太郎(42)。当選4回。妻はフリーアナウンサーの滝川クリステル。20年1月に第1子となる長男が誕生。