小泉進次郎環境相とレッズ秋山が「横須賀会談」/中

シンシナティ・レッズ秋山のユニホームに袖を通し笑顔の小泉進次郎環境相(右)と秋山(撮影・菅敏)

小泉進次郎環境相(39)とレッズ秋山翔吾外野手(32)の「横須賀会談」第2回は、互いの存在や思考方法を、きたんなく語り合った。少年時代から白球を追いかけてきた2人にとって、野球は共通項であり、ルーツ。その魅力、そして、進次郎氏から見た秋山とは?【取材・構成=斎藤庸裕、栗田成芳】

進次郎氏から見たメジャーリーガー秋山翔吾は、海を渡るどころか、大気圏を越えていた。

進次郎(以下、進) 僕の中では宇宙飛行士みたいなんですよ。宇宙飛行士には、彼らしか見えない景色がある。その景色って聞いてみたくなるじゃないですか? 「宇宙ってどんな景色なんですか」って。それに近いなって思いでいる。

秋山(以下、秋) (メジャーが)どんな景色だったか…。自分の成績が出なかったのは納得できないので、まだ、いい景色にはなっていないですね。

進 メジャーの景色って、数えられるだけの選手しか見られない。秋山君は、その景色を直接見られない多くの人たちに話す立場になった。本当に実現してしまって、すごいですよね。

秋 実際に見て、感じたものはたくさんありました。自分が引退した時に、プラスになったと思えるような見え方になるように、頑張りたいと思いますね。

横須賀出身の大臣とメジャーリーガー。ともに第一線で活躍する中で、お互いをどう見ているのか。

進 年下とか、後輩とか思わないですね。僕の中では同志みたいな思いかな。

秋 僕は、同志だなんて、そんな言葉は口が裂けても言えないというか、先輩ですし…。

進 (笑い)秋山君も打てる時、打てない時があって、その中できっと成長を繰り返しているんだろうと、時々、自分に重ねながら見ていて。そんな思いが同志みたいだな、と。

秋 進次郎さんは、僕みたいに野球ファンだけじゃなくて、全員に影響がある方。そんな方が同志と言ってくださるのは、すごく恐縮な思いがあります。

フィールドは違えど、ともに戦う同志。だから進次郎氏は、メジャー1年目がコロナ禍に見舞われた秋山に、複雑な思いもあった。

進 人生の大きな決断を下したのに、その幕が開かれない。ぶっちゃけた話、(メジャーに)行け行けと言っていた僕としては、申し訳ないな、という思いがありましたよ。

ぶつかった壁とどう向き合うか。試練は根となり、太い幹を作る土台になる。

進 環境大臣になってからいろいろたたかれて、うまくいっていないこともある。そういう中での学び、経験はすごく大きい。大臣という“打席”に立たなければ見えなかった景色っていっぱいあって。人の評価よりも、自分の中で何を得たかが、改めて大事だなと感じている。

秋 メジャーに行ってよかったという思いになるかは、今はまだ分からない。でも、まず踏み出せたことが、僕にとって大きかった。いきなりコロナがありましたけど、引退した後とかに、行ってよかったと思えるように、と思ってます。

進 「easy come easy go」という言葉があってね。聞いたことある?

秋 ないですね。

進 すごくいい言葉だと思うんだけど、簡単に手に入るものは、簡単に失われていく、って意味で。秋山君は、今、そのことを言っているなと思いましたね。

逆に言えば、苦労して手に入れたものは、簡単には失われない。進次郎氏は、秋山の言葉に、求道者の姿を感じていた。

進 メジャーに行ったばかりなのに、引退後のことを話してね(笑い)。野球の世界って、野球の道を追い求める哲学的なところもあって。彼はそういうところもありますよね。

秋 回りくどく、長くしゃべるので。浅く、何となくの感覚だけで動けないっていうのもあって。記者の方にも重ね重ね、しつこくしゃべる(笑い)。

進 「easy come easy go」って言葉は今日、初めて知ったかもしれないけど、無自覚に、その感覚で生きているんだろうなぁ。

秋 バッティングもそうかもしれないです。自分は良く言えば深く考えていて、悪く言うと、将来を含めて打算的に動いてるとこがあるかなと思いますけど。

進 金銭の打算とか、楽か、きついかの打算ではないよね。現にメジャー挑戦の決断は簡単なことじゃない。打算どころか、計算なんかできない世界に行くわけだから。すごいよね。

端々に表れる、2人の“共通項”である野球。その魅力とは何なのか。

秋 真剣な者同士がやっているからこそ、しのぎ合いだったり、読み合いが面白い。玄人的にはそういうところだと思いますけど、子どもたちには、打った抑えたを単純に見てほしい。

進 秋山君は今、野球とベースボール、何が違って何が同じなのか、それを両方経験する立場にいる。きっと、その2つが消化される時が来ると思う。かみ砕かれて発酵させてね。僕は秋山君が両方経験した結果、「野球って、ここが良いところです」っていうのを楽しみにしたい。

秋 使命感が…(笑い)。でもそういう気持ちでやらないとメジャーでやっていく意味はないと思う。人が感じられないことを感じる機会があるので。

進次郎氏の言葉には“秋山ファン”としての純粋な期待感もにじむ。その背景には、忘れられない日本人スラッガーの姿があった。

進 僕が(留学中に)ニューヨークで生活をしていた時、松井秀喜さんがヤンキースの4番だった。アレックス・ロドリゲス、デレク・ジーター、バーニー・ウィリアムズ、そんなスター集団の中に、松井秀喜なんですよ! 野球を知らない人は何を興奮してるんだ、って思うかもしれないけど。

秋 大丈夫です。野球ファンが読むことが多い新聞ですから。

進 異国の地で、外国人として暮らしていた、いち学生の小泉進次郎にとっては、日本人として、こんなに勇気づけられる存在はいなかったんです。

あの時の自身の感覚を踏まえれば、現在の秋山の存在の大きさが分かる。

進 今もアメリカはコロナの感染が広がる中で、特に日本人の留学生とか、そこで働いている駐在員の方とかは、すごく心細いはず。その中で、秋山君や日本人選手が、グラウンドに立って戦っている。それって言葉にならない勇気を与えたと思います。僕は実体験で、本当にそう思う。

宇宙飛行士とたとえた秋山が、最高峰のリーグでグラウンドを駆け回る-。

進 その景色を僕は、焼き付けたい。

レッズ秋山の応援に行くことを公言している進次郎氏。コロナの終息を願いながら明かした、互いの未来図とは-。(つづく)

※対談は2020年12月20日に新型コロナウイルス感染防止策を講じて行いました。

◆秋山翔吾(あきやま・しょうご)1988年(昭63)4月16日、神奈川県横須賀市生まれ。横浜創学館-八戸大を経て10年ドラフト3位で西武入団。15年にシーズン216安打のプロ野球新記録。首位打者1度、最多安打4度。NPB通算1207試合、116本塁打、513打点、打率3割1厘。19年オフにFAでレッズ入り。メジャー1年目の今季は54試合で0本塁打、9打点、打率2割4分5厘。15年プレミア12、17年WBC日本代表。183センチ、86キロ。右投げ左打ち。

◆小泉進次郎(こいずみ・しんじろう)1981年(昭56)4月14日、神奈川県横須賀市生まれ。米コロンビア大大学院修了。父小泉純一郎元首相の秘書を経て、09年衆院選で神奈川11区で初当選。19年に環境相に就任。20年に再任。兄は俳優小泉孝太郎(42)。当選4回。妻はフリーアナウンサーの滝川クリステル。20年1月に第1子となる長男が誕生。

小泉進次郎環境相とレッズ秋山が「横須賀会談」/上はこちら>>