大谷翔平16年日本シリーズ 投手攻略も打者でやられた/緒方孝市

<エンゼルス4-7レンジャーズ>◇21日(日本時間22日)◇エンゼルスタジアム

エンゼルス大谷翔平投手(26)がレンジャーズ戦に「2番DH」で出場し、3回の第2打席、右中間へ日米通算100号となる今季5号ソロを放った。今季2度目の登板となった前日は4回1安打無失点。投げた翌日のスタメン出場は今季初で、さらにシーズンでの登板翌日の本塁打は日米を通じて初となった。チームは逆転負けを喫したが、二刀流に再びエンジンがかかってきた。

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二刀流・大谷がもっとも輝いた16年、日本ハムは見事、日本一を達成した。その前に苦杯をなめたのが緒方孝市氏(日刊スポーツ評論家)率いる広島だ。緒方氏が決戦当時を振り返る。

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シリーズ前の記者会見で「マークする選手は?」と質問された。意図するところは分かっていたが「中田翔を含めて全員」という話をした。だが本音は大谷をどうするかという気持ちでいっぱいだった。

シーズン中からスコアラーが分析していた結果、不思議にも思える“ある結論”が導き出されていた。それは「大谷はインコースがない」ということだった。

まず打者・大谷について。パ・リーグの投手はほとんどインコース攻めをしていなかった。二刀流、球界の宝ということが影響したのかもしれないが、このシーズン、大谷が受けた死球はたった1つだけ。

それは交流戦で広島が与えたものだった。大谷ほどの強打者に対し、内角を攻めずに勝負することは考えられない。内角を意識させ、外側で勝負するのか、あるいは外角でカウントをつくって内角で勝負するのか。いずれにしても大谷を抑えるために内角球は欠かせないと思っていた。

不思議だと言うのは投手・大谷も打者の内角をあまり攻めないことだった。情報では打者のインコースを厳しく攻め込む投球はほとんど見受けられなかった。

自分が打席に立っているときに相手が内角攻めをしてこないので、そうしているのかどうかは分からなかったが傾向としてハッキリ出ていた。ひょっとして、内角攻めなどしなくても抑えられるレベルだったのかと思ったりするが。

なにしろ好投手である。160キロを軽く超えるストレートに高速フォークもある。外角一辺倒の配球でもなかなか打てない。従って打者には打席での方針を決めた。バットを出すのは外角甘めに来るストレートだけ、それだけを狙えということだ。ストレートだと思って高速フォークを空振りしてもそれはOK。外角球がほとんどだけに割り切って踏み込んでもいけた面もあったので徹底した。

プランなし、指示なし、打者に任せていてはどうにもならない。個々の力では勝てない、全員でかかっていかなければ歯が立たないと思っていた。

それもあって初戦で投手・大谷の攻略には成功したが打者・大谷には3戦目でサヨナラ打を浴びるなど、してやられた。あのシリーズはそういう印象だ。

最大限の賛辞を受けるのがふさわしい選手だろう。野球少年だけでなく、プロ選手にとってもあこがれの存在だと思う。二刀流復活の姿を日本のファンに見せてほしい。

◆16年日本シリーズでの大谷 第1戦は8番・投手で先発。打撃では3打数2安打も、投げては2本塁打を浴びるなど6回3失点で負け投手に。第2戦は代打のみ、第3~5戦は3番・指名打者で出場。第3戦は3-3の延長10回、2死二塁からこの試合3安打目となる右前へサヨナラヒットを放った。投手では1試合で0勝1敗だったが、打撃では5試合で16打数6安打、打率3割7分5厘をマークし、チームの日本一に貢献した。