【SNSと向き合う】レッズ秋山「年々鋭利に」小泉進次郎氏「ゼロは無理」

対談でバットを手に笑顔を見せる小泉進次郎氏(左)とレッズ秋山(撮影・菅敏)

昨年12月に行われた小泉進次郎衆議院議員(40)と、米大リーグ・レッズ秋山翔吾外野手(33)による2度目の“横須賀会談”。環境大臣から一国会議員に戻った進次郎氏と、メジャー2年目の昨シーズンはふがいない結果に終わった秋山。神奈川・横須賀市出身の2人が語り合った全文を、3回に分けてお届けする。

中編は「SNSとの向き合い方」について。

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-SNSを通じて誰もが情報を発信し、自由に意見を言える時代。顔の見えない相手からたたかれたり、考えがうまく伝わらないという“壁”もある

進次郎(以下、進) 本当に陰湿で容赦ない、こういう時代に入って、その中でも大臣のときも、何だって批判をされる。自分は変わっていないのに、変わったように受け止められるし、なかなか思いがうまく伝わらないなと。そういう中で乗り越えてきたっていうのもありますけど、政治家も人ですから。自分の心の健康を守るっていう意識を持っていないと、やられかねない。これは本当に思いますね。今年の東京五輪は、SNSを通じてのアスリートへの罵詈(ばり)雑言が深刻化したじゃないですか。あれは政治家にとっても人ごとじゃなくて。だから自分の対処としては(SNSを)見ない、遮断するっていう対処をするときも多い。

秋山(以下、秋) 第三者のフィルターを通さずに言えることって怖いなと思いますね。今はこうやって(目の前に)相手がいるから、言葉を選んでしゃべってるのは間違いなくある。だから、1人でしゃべること、1人で発信していくことが強く出るっていうのは、明るい話題に関してはいいんですけど、結構ネガティブなことになると刺さる。

進 アメリカでやっていて、なかなか結果が出なくて、ファンの手厳しい言葉とか、耳に入る?

秋 球場でヤジったりするのはビジターのファンっていう認識だったので、ホームにいる時はそんなに感じないです。まだ僕のことを期待して見ているファンも多いので。ただビジターでは、自分は(ファンから名前を)呼ばれているような感じだったんですけど、味方の選手に後で聞いたら、かなりひどいことを言われていたことはあったみたいです。その選手がボールを捕った後にそのスタンドのファンに向けてボールを投げつけてくれたり、守ってくれる選手もいました。僕は自分が英語を理解しきれてないことで助かっている部分もありました。ファンは自分が応援しているチームが勝ってほしいし、仕方ないと思ってますけど、発信の鋭利な感じは年々、いろんなメディアを通しても感じますね。

進 そこはアスリートの世界も大変じゃないですかね。

-秋山選手は、ツイッターやインスタで発信していない

秋 自分1人で独りよがりでしゃべると、人の表情とか、それを否定してくれる人がいない怖さが勝ってしまう。言った後に「あっ」って思うのがないのが、怖いんですよね。目の前にいる人を納得させるくらいの話し方だったりとか、メディアの方に取材して頂いてしゃべるときぐらいがちょうどいいなって。

進 非常に自己抑制的ですね(笑い)

秋 (発信することの)良い面はすごくあると思います。たとえば進次郎さんのインスタもやっぱり、その活動を知ってもらうっていうスタンスでやられているのが多いのかなと思っていて。

進 僕の1つの思いは、政治家の運動の可視化、見える化っていうところも目的の1つで。ああやって、いろんなところに行って、こういう方々と会っていると発信すれば、こういう活動をやっているんだな、こんな人と会っているんだなと(分かる)。そういったところと、政治家の仕事の多様さ、幅広さも知ってもらいたい。そんな思いもありますね。

-一方で、自分に対する記事やSNS上での声は遮断せざるを得ない状況がある

秋 怖いもの見たさで(エゴサーチを)してる選手とかよく聞きますけど。SNSとかツイッターとか気にはなりますけど、僕はほんと見なくなりました。全くにはならないですけど。10褒められても、1刺さること言われると、どっちが印象に残るかっていう感じですよね…。応援してくださる10は力に変えていけるんですけど。たとえば野球教室とか、自分は良かれと思ってやっていることに対して、言葉で攻撃してくる人の文字をポンって見てしまうと…。文章として読むと、少ない文字数でも、そこのイメージが残っちゃう。

進 やっぱりゼロは無理で、見出しは目に入りますね。でも、それ以上読まない。深入りしない(笑い)。だから人と会うと「大変だね」とか、「大丈夫?」って言われて、「そんなにたたかれてるんだな」ということを実感したりする。記事も全部読んでないっていうケースは結構ありますね。自分をそこから、引き離すというかね。全部読んでる人すごいなと思いますよ。例えば野球教室を批判する人って、どうやって批判するの?

秋 「そんなことやってる場合じゃねーだろ」って。

進 それって野球教室に対して言っているんじゃなくて、秋山くんが何やってても、そうなんだよね。何やっても言われると、萎縮するんですよね。それで批判されないようにすると、どんどん自分が小さくなっている気がする。だから、どこかで割り切って、ネガティブなことに神経を使うより、次につながることに集中するように気持ちを持っていくように意識している。もちろん、違うものは違うって言わなきゃいけない時もありますけど。

-1人歩きするコメントは、もう仕方ないという捉え方?

進 それを全否定するエネルギーを使うより、次に向けたエネルギーをどう使うかって考えた方が、自分の中では前向きなエネルギーの使い方になるなって思うんですよね。その典型的な例っていうのは、例えばレジ袋の有料化。有料化したのが僕だと思っている方が多いですけど、決めたのは僕の前の大臣なんです。私は具体化をしたんですね。それはほとんど知られてないでしょう。だけどそれを「あれは私じゃないんです」「私の前任者が決めたことをやってるんです」って言ったところで、それはプラスなエネルギーの使い方じゃないなと。だったら逆に、「こういうことって世の中のことを考えたら必要じゃないですか」っていう方向に話をしっかりしようって思います。もちろん、違うものは違うって言わなきゃいけない。フェイクニュースのようなもの、流してはいけないこともある。国民誰もがメディアみたいなものだから、そこは自分で自分を守る術っていうのを見つけていかないと、大変だなって思います。

-公人と私人の切り替え。そこに壁は感じる

進 自分は断ち切りたくても人がそれを許してくれない。例えば家族で外出してるとき。今は誰でも(写真を)撮れるじゃないですか。気付かれないように撮ってるつもりなんだろうけど、こっちは気づいてしまう。しかもそれが息子がいる時とかだと、本当に嫌な気持ちになる。家族を守る、そして自分を守る、これが大変な時代だなと思う。

秋 知らないところでやっている人っていうのは、知らないまま知らないところに上げて知らない人に見せて、って流れになる。その辺は、圧倒的に進次郎さんは大変だと思います。僕は気づかれていない方が大半なので。気づかれているような感じでしゃべりましたけど(笑い)。普通に電車も乗りますし。僕はユニホームを着ていなければ、あんまり線引きしないようにしてます。食事に行ったりするとき、僕は個室で食事するのが好きじゃなくて。お店の人と話したいとか思うので。ユニホーム着ていない時は一般人、っていうスタンスで常にいますね。野球選手だから特別に、っていうのが、何かむずがゆいっていうか、気持ち悪いっていうか。そうしないと扱えない人間って思われるのが最終的に損だなって思っていて。今日は、自分の中ではユニホームを着ている時と一緒の状況ですね(笑い)

(下編につづく)