【息子の存在】レッズ秋山「頑張る力」小泉進次郎氏「1つ1つ大切な瞬間」

レッズ秋山は「突破」、小泉進次郎氏は「挑戦」と色紙に記す(撮影・菅敏)

昨年12月に行われた小泉進次郎衆議院議員(40)と、米大リーグ・レッズ秋山翔吾外野手(33)による2度目の“横須賀会談”。環境大臣から一国会議員に戻った進次郎氏と、メジャー2年目の昨シーズンはふがいない結果に終わった秋山。神奈川・横須賀市出身の2人が語り合った全文を、3回に分けてお届けする。

最終回の下編は「家族の存在」から趣味論、そして今年に臨む思いを語った。

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-精神的に張り詰めた状態でのリラックス方法は

進次郎(以下、進) 今、完全に家族ですね。

秋山(以下、秋) 僕もそうだと思います。

進 帰った時に「パパー」って、猛烈なダッシュで向かってきてくれる息子の存在。

秋 2人の息子は家の中でバット振ったりしてるんですよね。上の子が幼稚園から小学校になって、下の子もそれに追いつくような感じで大きくなって、成長度合いが分かりやすくなってきた。遊んでいる時のリアクションは、もう英語の方がしやすいみたいで。会話の中に片言じゃない英語が入ってくると「あっ」って思わされる。この2年で、英語力は多分抜かれてると思うんですよ(笑い)。今アメリカじゃないと経験できないこともたくさん、あると思うんですよね。だから、より頑張ろうって思うのはありますね。今しか見られないものを見てるなって。この2年、(レッズの本拠地)シンシナティで一緒に生活して、その成長を見るのがより楽しくなったなというのはあります。自分たちで、今何しているかが、本人たちも理解できてきている。置かれている状況というか、大変さっていうのは妻が一番だと思いますけど、その中で、彼らなりに遊びの中でルールを作ったり、そういうのが出来てきているのを見ていると、やっぱり頑張らないといけないなっていう力になってきているのはあるかなと思います。

進 息子は(今年)1月に2歳でまだ話せる言葉はパパ、ママ、ワンワン。そういう感じですけど、コミュニケーションはできるんですよ。オムツ替えて「はい、ポイして」って言うとゴミ箱までちゃんと持ってく。「お風呂入るよ」って言うと、お風呂の方行く。ようやくこれが出来るようになったか、と感じる1つ1つの瞬間が、すごい大切な瞬間だと思って。ただ、育児の時間と仕事の時間をどうやって両立をするかっていうのは日々悩んでいて。たとえば、間違いなく、読書量は減っているんですね。ずっと読書もしてきたけど、今は、自分の子供と向き合っている時間は、本では学べない、読書以上のものだって。そういう思いがあるから、大臣の時に育休も取ったんだけどね。ただ残念ながら、せっかく子供といたいって思っても、それがかなわない環境にいる方もいっぱいいる。もっと選択肢が増えて、希望がかなうような社会にしなければいけない。子供と向き合う時間がちゃんと作れて、仕事もちゃんとできる。そういう方向に行かなきゃダメですね。自分が今、その両立に悩みながらやっている中では、本当に思いますね。

-これまで読書はどれくらい

進 一概には言えないですけど。もし今、おすすめの本何ですか?って言われたら、ぱっと出るのが、子供の絵本って感じです。それぐらい変わりました。学びのある、子供のしつけにもつながる絵本って、本当によくできているし、楽しみながら学んでるんだなっていうね。僕が(おすすめで)選んでいるのは、タッチペンで日本語と英語を選択できて、それを話してくれるっていう子供向けの本。これ、本当にすごくて。

-秋山選手は、米国での生活に順応しているという家族が刺激にもなる

秋 僕よりもいろんなものを守りながら対応している妻や、アメリカの学校に放り込まれた子どもたちは、やっぱり不安だと思う。その3人が環境に順応して「今年はもうクリスマスもお正月もシンシナティで」っていう感じだったんですよ。そんな3人を見ると、逃げちゃいけないなって。いろんなものに怠りがあっちゃいけない。そういうのが日常的に漂っている感じが、頑張っていかなきゃと思う要因で、一番大きいかもしれないですね。「まぁいいや」っていう、その線引きを下げたくないなっていうのはすごく思うので。

-その中でも、やはり壁はある

秋 言葉ですよね、一番は。(21年は)家族が球場に行けることが多かったんですが、その時に選手の奥さんとか、監督の奥さんとか、子供同士とかでコミュニケーションをとっていて。球場に行っても、孤独感がなくなったっていう雰囲気になっていった。最初は、どんな人に話しかけられて、どうやってあいさつしたらいいかも、ちゃんと分からない感じでしたけど、それがだんだん慣れてきて。それは少しずつ壁が下がったのではなくて、自分たちでステップを踏んで、その壁をちょっとずつ越えてっていう感じです。壁を越えたかは、はっきりは分からないですし、まだ絶対あると思う。でも、明らかに変化はあったなと。周りの方の支えも含めて。あとは自分です(苦笑い)。

-進次郎氏は、昨年12月18日の横須賀での野球教室で、そんな秋山選手の息子とも触れ合った

進 秋山くんの息子とね、長男とキャッチボールやって。いや、いいことだと思ったのはね、自分の気持ちをちゃんと言えるんですよ。「もうそろそろ、僕は(終わりで)いいかな」って(笑い)。いい子だなって。

秋 今、僕はドキッとしましたけど。言葉を選ぶように言っておきます(苦笑い)。

進 日本人だとさ、本当はやめたいんだけど付き合わなきゃとか、いろんなケースがあるじゃない? 秋山くんの息子はちゃんと言えますよ。大事なことです。

秋 上着脱いでも大丈夫ですか(大笑い)。だいぶ背中に汗をかきました。

進 ちゃんと自分の気持ちを表現出来る、1人1人の個にならなきゃいけないっていうのは、本当に日本の大きな課題。秋山くんの息子、立派だって思いました。

秋 褒められてるんですけど…。本人たちは正直、進次郎さんがどういう立場の方かって分かってないんです…。教え切れてないので申し訳ないです。

-2人の趣味は

秋 僕は本当、趣味がなくて、これに没頭するっていうのがあんまりないですね。だけど、家族と顔を合わせる時間が僕は欲しいなと思っていて、ボードゲームとかはやりますね。トランプとか、ちょっとしたテーブルゲーム的なものっていうのは、子どもたちと遊べるので、そういうものを基準に探してますね。テレビゲームって相手の顔を見ずにずっとやっているじゃないですか。だから(子供には)水曜日と土曜日だけ、って決めているんですよね。

進 たぶん、話を聞いていると、本当に趣味ってないよね(笑い)。趣味って言えるようなものを言わなきゃって感じじゃない?

秋 今のだったら無理やりなんとかって感じですね(笑い)。

進 僕もそうなんですよ。趣味って言われると、落語も好きだし、文楽も好きだし、読書も好きだし、映画鑑賞も好き。だけど、本当にそれを趣味として楽しんでいる人を見ると、自分のこれって趣味なのかなって思うぐらい。落語を見ていても、文楽を見ていても、読書していても、映画鑑賞していても、全部政治のことにつなげて考えてしまう。それで突き詰めて考えていくと、何か世の中のことで、これおかしいって思ったり、もっと人の役に立てるのになって感じた課題に取り組んで、それが実った時、しかもそれにちゃんと反応があった時に、「あ、このためにやってるんだ」って思える。そう考えると、やっぱり秋山君も仕事好きなんじゃないの?

秋 そうですね、野球から離れることはないですね。そこが中心になるのは間違いないので。何やっていても、そっちにはなりますね。

-進次郎氏は大臣から一国会議員という立場に戻り、秋山選手はレッズとの3年契約最終年。どう新たな1年に臨むか

進 日本には、改革志向の政治が今まで以上に必要です。なぜなら、世界は気候変動対策を軸に産業革命とも言うべき動きが明らかだから。世界の大競争にこれ以上乗り遅れたら、次世代の損失は計り知れない。そうならないためにも、この認識を共有できて、共に最後まで走りきれる、そういう仲間たちと強い絆を構築しなければいけない。5期目は、そんな仲間の議員たちの活躍を応援する、そこに力をもっと入れたいと思ってます。政治家にとって次世代のことを考えるって当たり前のことなんだけど、(今年)2歳になる子供と向き合っていると、自然と将来のことを考えますよね。なので、これから自分がやっていくテーマ設定っていうのは本当に、次の世代の子どもたちが大きくなったときの日本はこのままだとどういう姿になるのか、そして、それをどう、変えなければいけないのか。今後どう生きていくかっていうことを考えると、そこですね。

秋 僕の場合、大きめの分岐点が来るのは容易に予想はつくので、それに向けて、ただやるだけです。シーズン中に何か起こるのも否定出来るわけではないので。ただその時も、何か軸になるような信念というか、決断できるような材料が持てているといいなと思います。

進 来年楽しみだね。

秋 頑張ります。本当に。