秋山翔吾 パワーヒッターへ“大改革”楽しむ大谷翔平から学び

14日、自主トレでバットを手にストレッチするレッズ秋山

<潜入>

チャレンジャーの心得は、変化を楽しむ姿勢にあり-。レッズ秋山翔吾外野手(33)が、アベレージヒッターからパワーヒッターへの“大改革”に挑んでいる。静岡・下田で12日から9日間行った自主トレでは約10年間、手を加えていなかったバットの形状を変更。フォームも下半身の使い方を大きく変え、体重増にも着手した。思い切ったチャレンジには、エンゼルス大谷翔平投手(27)の姿にもヒントがあった。メジャー3年目。後がない男の心に潜入した。【取材・構成=斎藤庸裕】

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信じてきた自分の軸を変える。そこに恐怖心はないのか-。秋山は言った。「怖さはないですね。自分がどう対応できるのか、今までやったことのないチャレンジで、楽しみはありますよ」。日本を代表するヒットマンが、パワー型の新境地に足を踏み入れる。その挑戦へのマインドは“楽しく”。昨季、日米を熱狂させた二刀流の姿にも感じるものがあった。

「やっぱり、見ている人やファンが『なんか楽しそうにやっているな』と思わないと、応援されないんじゃないかなと。翔平を見ててもそう思います。表情が明るいっていうのは、見る人を引きつけるのかなって。もちろん打てなかった時の表情も映像に映るけど、彼は自分で選んだ道を楽しんでやっている」

投打二刀流で本塁打も量産する大谷には、華やかさがある。昨季は感情表現の豊かな姿もフォーカスされた。一方の秋山はコツコツと着実に、安打や出塁を重ねるタイプ。発言にしても、どちらかといえば哲学的で、自らを分析すると「悲壮感というか、マイナスな方からしゃべるから、それが文面になると重い(笑い)。ちゃんと伝えなきゃって思うからどうしても、重たくなりがちなんです」と自覚する。

どこか対極に位置する2人。メジャー投手攻略への取り組み方も対照的だった。タイミングの取り方などで微調整はあったものの、この2年間、西武時代からのスタイルを維持した秋山に対し、大谷は変化に積極的だった。しかし「結果が出なくてもこだわり続けている人間がいいのか」と考えた時、決断した道を楽しむ大谷の姿は1つの“エール”にもなり、これまでと「真逆なこと」と言う道を、自分で選んだ。

数字が失敗を物語る。打球速度は平均85・8マイル(約138キロ)で打球角度のアベレージは2・4度。ともにメジャー平均以下で、「今までのバットだと打球が飛ばない」と痛感。約10年間、変えなかった相棒に手を加えた。メープル素材、重さ900グラムは変えないが、長さを0・25インチ(約6・35ミリ)伸ばして33・75インチ(約85・73センチ)に変更。上部をこれまでより細くし、真芯のポイントは、操作しやすいグリップ寄りから、飛ばすことに重きを置いてヘッド寄りにした。現在は形状が若干異なる2種類を試しており、実戦でテストした上で運命をともにするバットを決める。

“大改革”で、確実性という「らしさ」が失われる可能性もあるが「変わりにいって、それでダメだったら『手を尽くしたな』と思える。頭に浮かんだものを全てやったと思って、野球を終われる」と言い切った。

若手ではなくとも、まだ33歳。それでも、退路を断つ言葉すら出た。「メジャー終わったら日本で、と思っているようなやつ、野球の神様が許してくれないでしょう。今この場で頑張ろうとせず、後ろに受け皿があると思ってたら、先にも進めない」。覚悟を決め、変化する自分を楽しむ-。秋山の心に、迷いはない。

○…打撃フォームは、打球を飛ばすために下半身の使い方を大きく変えている。これまでは、軸足の左足に体重を残し、できるだけボールを引きつけて打つスタイルだった。今回の自主トレでは、ボールにより力を伝えるため、右足を強く踏み込み、重心を前方へ置くイメージのスイングで、打撃練習を重ねていた。