藤浪晋太郎投手(29)が19日(日本時間20日)、アスレチックスからオリオールズに電撃トレードされた。ア・リーグ西地区最下位チームから、同リーグ東地区首位チームに“栄転”した背景にある「状態好転」の要因とは-。
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ずっと気になっていた。藤浪晋太郎は帽子をのぞき込み、一体何を確認しているのだろうか。まさか帽子のツバに「気合」とか感情を高ぶらせる言葉を書いているとか…。素朴な質問をぶつけると、本人はケラケラと笑い飛ばした。
「あ~あれですか? 高校球児みたいに何か書いているわけではないですよ。その場その場でデータを確認しているだけです」
制球難が落ち着き、状態が一気に好転し始めた5月下旬。大器には明らかな変化が生まれていた。セットポジションから始動するフォームで言えば、左足を上げた際、二段モーション気味に力をためる動作が加わった。もう1つは投球外。マウンド上で頻繁に帽子を脱ぎ、その内側に目をやるようになったのだ。
聞けば、各打者の情報が英語で書き込まれた紙を帽子に挟み込み、登板中にも整理しているのだという。「この打者はここら辺にこの変化球を投げたら振りやすい、とか。そんな感じですね」。メジャー1年目。メジャー打者の特徴、傾向をリアルにつかみ始めた点も、一気の状態好転を後押ししているのだろう。
なぜ藤浪晋太郎は復調したのか? フォーム改良が最大の要因かと問うと、本人は「特に何か大きく変えたわけではないんですけどね」と苦笑いする。
振り返れば、阪神時代からメカニックのわずかな変化を質問するたび、「ボールを離すまでの流れはあくまで過程に過ぎない」といったニュアンスの答えを多くもらった。今ピタッとタイミングがハマるフォームがたまたま二段モーション気味、というだけなのだろう。
アスレチックス先発ローテの一員として迎えた23年。開幕から1カ月は制球難に苦しんだ。防御率10点台超の時期が長く続いたが、現在は34試合登板で5勝8敗3ホールド、防御率8・57。中継ぎに配置転換されてからは徐々に安定感をアップさせている。
6月20日からは11試合連続無四球で、7月の月間成績は7試合登板で2勝1敗1ホールド、防御率2・25。かつて自身を「不器用なタイプ」と分析した右腕からすれば、ポイントはシンプルに「慣れ」だったのかもしれない。
日本よりも滑りやすいボールに硬いマウンド、配球の変化に1歩1歩アジャストしている藤浪。ア・リーグ東地区首位に立つオリオールズがトレードで欲しがった背景には当然、理由がある。【野球デスク=佐井陽介】