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「大谷フィーバー」で沸くロサンゼルスに、サッカー界でも時代を切り開く志を胸に、闘い続ける男がいる。
元日本代表でMLSのLAギャラクシーに所属するDF吉田麻也(35)は昨年8月、新たな勝負の地に米国を選んだ。ワールドカップ(W杯)、オリンピック(五輪)ともに3大会出場。オランダから始まり、イングランド、イタリア、ドイツと海外で勝負を続ける吉田に異国の地で成功するマインド、必要な要素、今後の発展を確信するMLSへの思いを聞いた。【取材・構成=久保賢吾、斎藤庸裕】
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吉田は、10年にオランダのVVVフェンロ移籍から海外でプレーを続ける。現在、ドジャース大谷翔平投手(29)が注目を集める米ロサンゼルスの地が、5カ国目。文化や食事、生活スタイルも異なる異国の地で成功を収める上で大事なことに「忍耐」を挙げた。
「言葉も大事だし、技術、能力も大事なんですけど、外国人として働いていくのは、どんな環境でも簡単ではないと思うんです。記者でもカメラマンでもレストランでも何でもそうだと思うんですけど、うまくいかないことがたくさんあるんで。やっぱり忍耐、その不便さを楽しめるかどうかは、大事なんじゃないかなと思います」
サッカーの本場である欧州で活躍し、次なる戦いの舞台に米国を選んだ。昨年8月の入団会見では、MLSへの移籍を決断した理由の1つに「情熱を燃やせる場所」と答えた。
「ヨーロッパで長くやってて、ある程度のことは見聞きしてやってきたので、新しいことが少なくなってくる。その国々や競技によってもルーティンがあるし、そういうのに慣れすぎてる自分に対して、これでいいのかっていう自問自答があるんで、新鮮さというか、吸収率を高めるためにも、ここでの経験はものすごく自分のプラスになっています」
世界に向け、MLSの周知、発展を願いながら、移籍2年目の今季は主将を任される。
「なんか気付いたら、そうなってましたね。でも、こういう役割を担うことも僕が来た意味の1つ。ただサッカーをするだけだったらどこでも良かったわけで、新たなチャレンジをするっていう時に、まだ日本人が知らないことを開拓していくっていうのはモチベーションの1つだったんで、MLSを盛り上げていけるようなことができるのはすごくうれしいです」
吉田が学生の頃、中田英寿や小野伸二らが欧州のチームへと移籍し、日本サッカー界は大きく飛躍を遂げた。その姿を吉田も米国の地で追い求める。
「当時はそんなに多くなかったですけど、日本人として誇らしいなと思ったし、自分自身もそういう存在になりたいなと。サッカー教室とかもそうだし、何か自分の足跡をピッチ内外で残せたらいいなと思ってます。もちろん、僕自身もここで結果を残したいし、MLSのことをもっと知ってほしいし、それを伝えていく責任が自分にはあるなというのは思っています」
現在、MLSではアルゼンチン代表でインテル・マイアミに所属するメッシ、ウルグアイ代表のスアレスら超一流の選手がプレーする。
「僕が見たところで言えば、ドイツ2部とかオランダとかと比べても、全然こっちの方が環境は整ってるし、日本人がいきなり5大リーグ(ドイツ、スペイン、フランス、イングランド、イタリア)に行くと難しいと思う。今はベルギーとかオーストリアとかスイスとかに行くことも多くなってきてますけど、それならMLSに来て、アジャストして、欧州に行くのもありかなと思います」
米国では4大スポーツ(NFL、NBA、MLB、NHL)の人気が高く、複数のチームがロサンゼルスに本拠地を置く。
「個人的にはアメフト、バスケが特に人気があるような気がします。でも、この間、リトル・トーキョーに行ったら、めちゃくちゃ大谷選手だらけでした(笑い)。大谷選手の街かっていうくらい、大谷選手がいて本当にすごいなと。大谷選手が来てくれて、盛り上げてくれて、八村選手とかもいるんで、そのついでにギャラクシーにも来てくれたらいいなと思います」
昨年は大谷が当時所属したエンゼルスの本拠地エンゼルスタジアムを訪れ、ファーストピッチも実施した。
「実は、野球はそんなに詳しくなくて…。(元阪神の)下柳さんと親戚なんですけど、日本のプロ野球も行ったことがないんです。エンゼルスの試合を見させてもらった時にルールを理解して、面白いなと思いましたね」
ロサンゼルス市議会は決議で5月17日が同市の「ショウヘイ・オオタニデー」と決定し、空前絶後の「大谷フィーバー」が巻き起こる。ドジャースタジアムでの試合観戦は「いつか、機会があれば」と言いながら、大谷のMLS観戦をひそかに期待した。
「僕がドジャースの試合に行くのは、全然普通だから、逆に大谷君がギャラクシーの試合に来てくれないですかね。本当に来てくれたら、スタジアムが大変なことになっちゃいますけどね(笑い)。でも、試合を見に来てくれれば、面白いと思いますよ。それは約束します」
ロサンゼルスでは、26年にサッカーW杯(米国、カナダ、メキシコの北中米3カ国共催)、28年には夏季五輪の開催が予定される。スポーツの本場の米国で日本人選手の活躍が今、注目を集める。
■5月にサッカー教室
吉田は5月に米国では初となるサッカー教室を行った。現地在住の子どもたち約60人を熱心に指導。「(日本とは)違う国で頑張っている者同士、助け合ったり、励まし合ったりできたら。子どもたちだけじゃなくて、日本人、企業のコミュニティーがさらにつながって、みんなで協力して輪を大きくしていけたら」などと話した。在ロサンゼルス日本国総領事館が後援。大いなるサポートを受け、2回目以降の開催も見すえている。
◆吉田麻也(よしだ・まや)1988年(昭63)8月24日、長崎県生まれ。名古屋ジュニアユース、同ユースを経て、07年にトップ昇格。10年1月にオランダのVVVフェンロに移籍し、12年8月にプレミアリーグのサウサンプトンに移籍。20年1月にセリエAのサンプドリアへ、22年7月にブンデスリーガのシャルケに移籍し、23年8月にMLSのLAギャラクシーに移籍した。五輪、W杯ともに3大会に出場。
■新加入DF山根視来、2万観衆「日本ナイト」でアシスト決めた
もう1人の侍も、新たな環境での挑戦を楽しんでいる。5月26日、LAギャラクシーのDF山根視来(30)が移籍後、ヒューストン・ダイナモ戦で初アシスト。逆転勝利に貢献した。この日はジャパニーズ・ヘリテージナイトで、2万1707人集まったスタジアムには日本語の横断幕が掲げられた。「海外で、こうやって日本語で応援してもらえるのはすごくうれしい。彼らのために、ファンのためにとはいつも思っているので。勝ち点が取れて良かった」と語った。
大谷がドジャース移籍後初のオープン戦に出場した2月27日の1日前、山根は公式戦デビューを飾った。インテル・マイアミ戦で、メッシとマッチアップした。「すごかった。ビックリしました。ディフェンダーやっていると、相手の動きとか大体予想ができるんですけど『何を考えているんだろう? その選択肢あったの?』みたいな。それは初めてでした」。世界トップレベルを肌で感じた。
コミュニケーションで必要な英語はゼロからの出発。同じDFで頼りがいのある吉田のサポートにも感謝する。「(試合への)準備とか、ケアもそうだし、食事、英語、コミュニケーションの能力とか、全てすごいなと思います」と刺激を受ける日々。新天地での挑戦は「楽しいです」と、目を輝かせた。【斎藤庸裕】