「二刀流」として復帰したドジャース大谷翔平投手(31)が、苦しみながらも2年連続世界一をつかみ取った。
ブルージェイズとのワールドシリーズ第7戦に中3日で先発。投手として3回途中3失点と踏ん張り切れなかったものの、打者としては2安打1四球。全員野球を結晶した劇的勝利に貢献した。メジャー8年目は、自己最多の55本塁打&62奪三振。投打にフル稼働が期待される来季へ向け、最高の形でシーズンを締めくくった。
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目の前に広がる歓喜の光景、仲間の笑顔が、すべての苦しさ、悩み、憂いを吹き飛ばした。延長11回。マウンド上で両手を掲げる山本に向かって、大谷は全身を躍らせながら駆け出していた。「すごい展開でしたけど、全員がいい野球をして、最後、素晴らしい勝ちだったと思います」。だれもが目標に掲げても、世界一に手が届くのは30球団で1球団だけ。今世紀で初めて連覇を遂げた瞬間、大谷は、昨季とも異なる、極上の達成感を味わった。
第4戦から中3日で挑んだ先発マウンド。周囲が思い描くような完璧なストーリーとはいかなかった。立ち上がりから先頭打者に出塁を許し、3回には4番ビシェットに先制3ラン。志半ばで降板した。だが、「二刀流」の大谷は、そこで終わりではない。「悔しい形で打たれてしまいましたけど、点を取られた後も、何とか打線の1人として一生懸命プレーしようと思っていました」。2安打1四球は得点にこそ結びつかなかったものの、ベンチ最前列で声を張り上げ、同僚を鼓舞し続けた。
ド軍移籍2年目は、周囲が見えない場所で幾多の壁と向き合ってきた。昨季、打者で2年連続MVPを獲得した一方、投手としては地道なリハビリを繰り返した。春季キャンプ以来、打撃、走塁、投球と「世界で最も練習メニューの多い野球選手」と言われるほど、体をいじめ、細かいケアに時間を割き、心を砕いてきた。常にチーム事情を考慮したうえで、公式戦と並行してリハビリを進めた。すべてはポストシーズンでの登板、連覇達成から逆算したうえの「二刀流復活プラン」に基づくものだった。
23年WBC決勝のフィナーレの再現ではなく、後輩山本が常識外の連投で締めくくった光景は、頼もしくもあり、あらためて刺激になった。「素晴らしいですね。由伸が世界一の投手だと、みんなが思っているんじゃないかと思います」。大谷だけが脚光を浴びるチームは、誰よりも大谷自身が望んでいない。山本が大躍進し、佐々木も大きなステップを踏んだ末のワールドシリーズ連覇。「終わったばかりなので、今日明日ぐらいは、この勝利に存分に浸りたいと思います」。大黒柱の大谷が来季、よりハイレベルな「二刀流」を発揮すれば、大谷、ド軍とも、他を寄せ付けない円熟期を迎えるに違いない。
○…ドジャース大谷がイニング間に行う投球練習に、物言いが入った。大谷が1回表は塁上、3回表は打席にいたため、通常3分弱である攻守交代の時間が延長された。これに対し、ブルージェイズのシュナイダー監督が審判に確認を行った。ルールでは「投手がイニング終了時に塁上、次打者席、打席にいる時」や「特別な事情がある時(捕手の道具着用時など)」は、審判が交代時間の延長を許可できるため、ドジャース側に問題はなかった。
○…日本ハム栗山CBOが前回WBCで共闘し、世界一連覇を果たしたド軍の日本人トリオを祝福した。「身内感覚で見てるので思わず拍手しちゃいました」と笑顔。胴上げ投手になった山本には「ああいう間違いのない投球ができるのは、ほんとに由伸らしい。みんながエースって呼ぶ要因」と絶賛。中3日で先発も3回途中3失点で降板した大谷には「宿題残して翔平らしい。また来年、大きな目標を掲げながら前に進むんだろうな」と話した。
▼ドジャース大谷が6回0/3で93球を投げた第4戦に次いで、ワールドシリーズ(WS)2度目の先発投手を務めた。第7戦に先発した日本人は、17年ダルビッシュ有(ドジャース)に次いで8年ぶり2人目。中3日での先発登板は、エンゼルス時代の21年4月17日(2回31球)→21日(7回102球)に次いで2度目。17日は雨で中断し、そのまま降板となっていた。
▼大谷は打者として2安打。MLB公式サイトのラングス記者によると、ポストシーズンのシリーズ決着がつく試合で登板しながら複数安打を放った選手は、34年WS第7戦のディジー・ディーン、81年ナ・リーグ優勝決定戦第5戦のスティーブ・ロジャーズに次いで44年ぶり3人目。WSの決着がつく試合で安打を放った先発投手は、75年第7戦のガレット(レッズ)とリー(レッドソックス)以来50年ぶり。