2026年のMLB公式戦が開幕し、今季も新たな日本人選手がメジャーの舞台に立った。開幕戦でデビュー弾を放ったホワイトソックス村上宗隆内野手(26)、ブルージェイズ岡本和真内野手(29)の日米通算250号コンビをはじめ、先発ローテーションの一角として期待されるアストロズ今井達也投手(27)と、今季も実力派選手が海を渡った。18年の大谷翔平投手以来となる日本人の新人王は誕生するのか。まずは順調なスタートを切った各選手の動向について、周囲の声を探った。
★村上の底力
開幕戦から3戦連発と鮮烈なデビューを飾った村上の底力を、だれよりも冷静に見てきたのが、ホ軍ジョシュ・バーフィールドGM補佐(43)だった。メジャー通算241本塁打の大砲として知られた父ジェシーは93年、長嶋巨人の一員としてプレー。当時、息子ジョシュも一緒に来日。インターナショナルスクールに通いつつ、頻繁に球場に訪れた。その後、選手としてメジャーでのプレーを経て、現在、ホ軍の編成に携わる。日本での生活は忘れていない。村上への思い入れが強いのも当然だった。
「マイナーから上がるよりも、よりチャレンジのはずだが、とても安定感がある。周囲は本塁打を打てるパワーがあるのは分かっていると思うが、彼はそれ以上にいい打者であることに気が付いていないと思う。今後、対戦が2巡目になったりするまで学習も必要だろうが、ここまではとてもすばらしいと思う」
自らも経験したように、異国の文化を知ることが、村上にとって新たな刺激となり、成長につながるとも分析する。
「スピードに慣れることと、投球の質を知ることが大事。シーズンが進むにつれ、相手のプランや戦略、カウント別の変化球などを学んで適応することは必要になるだろうが、彼はきっと成功し続けると思う」
技術的な適応以上に、村上のポジティブ思考、コミュニケーション力を含む人間性に、活躍できる可能性を見いだしているのも、同補佐ならではだった。
「彼はとてもイージーガイ(なじみやすい人)。すばらしく人間的で、それでいて、自分に対してはすごく真面目。クラブハウスでも人気者。僕が思っていたよりも、英語もかなり分かっているし、何よりもおもしろい男だね」
一筋縄ではいかない、長丁場の公式戦。それでも、わずか数試合で、村上がホ軍の中軸となったことは間違いない。
★岡本のコミュ力
日米両球界を知る立場だからこそ、その言葉は説得力にあふれていた。ヤンキース、ブ軍、日本ハムなどでプレーし、現在、ブ軍のアナリスト担当を務める加藤豪将氏(31)が、メジャー1年目を迎えた岡本の「現在地」について語った。
「フィールド面でのパフォーマンスについて(評価)は早すぎると思いますが、それよりもチームへのなじみ方がすごい。チームの一員となってシーズンを戦うという雰囲気になっているので、それが一番というか、安心というか、すごく見ていても楽しいです」
昨季、ワールドシリーズ第7戦でドジャースに惜敗したブ軍は昨オフ、投打ともに総合力アップに力を入れた。その中核が岡本の加入だった。ただ、戦力面だけではない。同じ価値観、方向性を共有しない限り、公式戦、ポストシーズンは勝ち抜けない。
「キャプテン格のゲレロとスプリンガーが、岡本とずっと話してプレーしやすい環境を作っているというのはすごく大きいことですし、かわいがってます」
2月のキャンプイン以来、WBCでの一時帰国、再合流、公式戦開幕…と、慌ただしい日々を過ごしつつ、開幕以来、6試合連続安打、2本塁打と結果を残した。そんな姿を加藤は頼もしげに見つめる。「英語とスペイン語をしゃべっていますし、カズマ(岡本)の表現もすごくおもしろい。チームに溶け込んでいる一部だと思います」。
岡本特有の「ビッグ・ベイビー・スマイル」は、どうやら国籍、人種を問わず、受け入れられるらしい。
★今井 独自調整感謝
今井は「新人」の立場ながら独自調整を任されていることに感謝の思いを口にしていた。「日本の時からやっていることを、そのままできる環境をつくってもらっているので、ストレスなくできているし、すごくやりやすくできていると思います」。開幕投手を務めたブラウンが故障離脱したこともあり、ローテの中軸として期待は高い。イスパーダ監督は「ボディーランゲージを見ても、どれだけリラックスして同僚とうまくやっているかが分かる」と評価。
★グリフィン 5戦で217億円
グリフィン(パイレーツ)は、メジャーでわずか5試合しか出場していない時点で、球団史上最高額の1億4000万ドル(約217億円)で9年契約を結んだ。出来高次第で1億5000万ドルとなる。昨年は1Aから3Aまで一気に駆け上がり、トータル122試合で打率3割3分3厘、21本塁打、94打点、65盗塁、OPS・942で、ベースボールアメリカ誌のマイナー最優秀選手に選ばれた。「今いる選手たちと多くの素晴らしいことを成し遂げていくつもり」と将来像を描いている。
★デローター 開幕3戦4発
デローター(ガーディアンズ)は、16年ストーリー以来、史上2人目の開幕から3戦4本塁打という強烈デビューを果たした。新人ながら開幕週の週間MVPも獲得。ドジャース戦で投手大谷と対戦したため、日米のファンにも存在をアピールした。ジェームズ・マジソン大から初のドラフト1巡目で入団しながら、3年間はけがに泣かされてきた大器。ボート監督は「この若者は落ち着いている。物おじしていない」と精神面の強さを評価している。
<記者の目>
1995年、日本人初の新人王となったドジャース野茂は、マイナー契約からスタートした。その後、マリナーズ佐々木、イチローが選出されたものの、18年に「二刀流」で傑出した成績を残したエンゼルス大谷まで、日本人が「新人」として評価されにくい傾向は年々強まっていった。
新人王はBBWAA(全米野球記者協会)に所属する記者の投票によるもので、残した成績が重要視されることに違いはない。その一方で、ドラフトなどを経てマイナーからはい上がってきた若手選手と、NPBで活躍し、高額年俸で移籍してきたスター選手を同じ「ものさし」では測れなくなった背景がある。
今年は、岡本、今井、村上の3人がデビューした。ただ、よほど傑出した成績を残さない限り、彼らの中から選出される可能性はおそらく低い。今後、森井翔太郎(アスレチックス傘下)、佐々木麟太郎(スタンフォード大)らがデビューするまで、日本人が新人王になるハードルは高いといえる。【MLB担当=四竈衛】