大谷翔平「だるま」に注文殺到“七転八起”老舗5代目社長が込めた思い

ドジャース大谷翔平とのコラボレーション高崎だるまを持つ大門屋の5代目、中田千尋社長

日本の伝統と誇りを届ける。ドジャース大谷翔平投手(31)の活躍をたたえる限定だるまが誕生した。

株式会社エンスカイが5月15日から「大谷翔平×高崎だるま」予約受付開始を発表。初日から注文が殺到して2個セットの第1次販売分が即完売する大反響となっている。だるまを手がけたのは日本一の生産量を誇る群馬・高崎市の創業100年以上の老舗「大門屋」。五代目社長の中田千尋さん(36)が取材に応じ、商品に込めた思いを語った。【松尾幸之介】

   ◇   ◇   ◇

取材当日の21日、海の向こうでは大谷が投手兼DHで出場。先頭打者本塁打のほか、投げては5回無失点。二刀流の活躍でチームを勝利に導いていた。工房もある高崎市内の店舗に入ると積み上げられた赤い高崎だるまがお出迎え。職人らがいつも通り制作に励んでいた。

中田社長は「お客さまから2種セットが『30秒で完売した』とご連絡もいただきました。高崎だるまを知っていただけるだけでもうれしいこと。うちの商品のクオリティーを感じていただきたいです」と話した。多くのキャラクター商品などを手がけてきたエンスカイが、伝統を守りながらも時代に合わせた商品制作を進める大門屋に「ぜひお願いしたい」として始まった企画。約1年かけて綿密に打ち合わせ、代理人を通じて大谷サイドにも承認を得た公認商品として届ける。

中田社長が職人らに伝えたのは「平常心」で取り組むこと。「普段から誇れる品質で作っているのだから、大谷選手だからと気構えしたら他のお客さんに失礼になる。いつもと同じように作ってくださいと話しました」。23年WBC決勝前に大谷が選手に語った名言「憧れるのをやめましょう」にも通ずる精神で、だるまにも向き合った。

黄綬褒章も授与された熟練職人の父純一さんから23年5月に社長の座を継いだ。当初は「伝統工芸品を扱う会社に似合わない男性ウケしそうな女性が働いている」とやゆされることもあった。父の判断で大方の方針が決まっていた社風を改革し、受け継ぐべき部分は残しつつ「赤いだるましかなかった」陳列棚に、トレンドと見た「アマビエだるま」などカラフルな見た目の商品を次々と投入。子ども向け絵付け教室実施など、幅広い世代へ浸透させるべく奮闘した。

地域屈指の名店である大門屋が紡いできた歴史は「大きな幹」と表現。「大きな幹がある大木であれば、風が吹いても台風が来ても絶対に倒れない。芯を持って時代に合わせていくことができる柔軟な会社になっていきたい。そうしたことが形となって今回にもつながったと信じています」。

大谷の活躍ももちろん日々確認している。「けがやいろんな騒動を乗り越えてMVPをとられたり、同世代の方の人生として勝手に重ね合わせて考えてしまって、勇気づけられています。だるまもお届けできたらいいなと思っていますし、私にも2歳の息子がいますが、ぜひ大谷さんのお嬢様にも差し上げて、日本にもいいものがあるよと知ってもらえるきっかけになったらいいなと。大きなだるまを作って、ドジャースタジアムで持って観戦したいですね。息子がいなかったら、多分もう行っていたと思います(笑い)」。

今回はユニホームをイメージした白、青、グレーの3色を制作。部屋に飾りやすい12センチサイズで、背面には背番号のほか、昨季にMVP、サイ・ヤング賞、新人王に輝いた選手のみに与えられる特別な証し、金色のMLBロゴもあしらう。青、白の2個セット(2万7500円)と白とグレーはバラ売り(1万1000円)も実施。全て数量限定で人工芝を用いた特製台座(2420円)も販売する。

すでに品薄状態だが、現状の増産予定はない。「やはり私も固定観念をなくして日々やっていかなきゃいけないなと思います。大谷さんにはこれからも世代のトップとして走り続けてほしいです」。だるまが示す“七転八起”の教えのごとく、人々の思いは共鳴し、新たなイノベーションを生み出していく。

◆中田千尋(なかた・ちひろ) 1989年(平元)11月5日生まれ、群馬県高崎市出身。都内の大学卒業後、故郷へ戻り「大門屋」社員として勤務。23年5月に五代目社長となる。姉2人のうち、1人も社員で在籍。今後はハイブランドとのコラボにも興味があり「色などのトレンドをデザインに投影することもありますし、革製品のだるまとかがあってもいいかもしれない」と意気込む。毎朝飲むコーヒーがルーティン。趣味は美容。一児の母。