史上最速の先発右腕ミジオロウスキー、快速球を連発できる訳と素朴な夢

ブルワーズのミジオロウスキー(ロイター)

メジャー2年目でサイ・ヤング賞の有力候補となっているブルワーズの剛腕ジェーコブ・ミジオロウスキー投手(24)が、球速100マイル(約161キロ)連発で注目を集めている。6日の敵地ロッキーズ戦では自己最速103・7マイル(約166・9キロ)を記録。データ解析が始まった08年以降、先発投手では最速球をマークした。世界的な人気アニメ「ポケットモンスター」を愛し、ゲーマーの一面も見せる若き右腕。幸せな家庭を夢見る青年が、いかにして剛球を投げるのか-。そのメカニズムに迫った。(取材・構成=斎藤庸裕)

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24歳の若き青年は、純朴だった。夢は何か-。最速168・2キロの世界を生み出す剛腕はきっと、壮大なの物語を描いているのだろう。だが、実際には違った。「何だろう。今、この大きな舞台にいることかな。もちろん、ワールドシリーズやサイ・ヤング賞もそうだけど、ここがもう夢だったんだ。これからは、人生そのものにも目を向けていきたいね。家庭を持って、子どもを育てて、普通の生活がしたいな」。あどけなくも見える笑顔で、裏表のない素直な一面をのぞかせた。

身長201センチで、体格に恵まれた。筋肉質で張りのある下半身とは対照的に、上半身はヒョロリと細い。実はそこに、強みを最大化する訳があった。胸や上腕の方を触りながら、「柔軟性を失いたくない。脚を強くしてマウンドを力強く踏み込みたい。僕はオオタニみたいにホームランを打つ必要はないからね。僕にとって大事なのは下半身でしっかり地面を蹴って、その力を上半身に伝えること。(筋肉質で)大きな上腕はいらないんだ」と語る。

その上で、最も大事とすることがある。プレート板からどれだけ前方でボールをリリースしたかを示す「エクステンション」だ。「僕は、多くの投手ができないような体勢を作ることができるくらい、柔らかい。背も高いし、前方への伸びを最大限に使いたい。打者にとっては、ボールが速く見えるからね」と明かした。MLB公式データ解析サイト「ベースボール・サバント」によると、エクステンションの数値7・5フィート(2メートル29センチ)は、ドジャースの右腕グラスノーらと並んでMLBトップ。平均球速100マイル(約161キロ)のフォーシームは、打者の体感では数字以上になる。

鍛え上げた強靱(きょうじん)な下半身のバネを使い、上半身の柔らかさと組み合わせることで、先発投手の過去最速球が生まれた。ストレッチはもちろん、「ヨガも大好きなんだ。(柔軟性の維持に)すごく役立つよ」と、可動域を広げるトレーニングを欠かさない。もっとも、上半身強化が皆無という訳ではない。「肩周りの軽い負荷、ゴムバンドを使ったトレーニングとか、あとは握力強化のためにグリップリングも使い始めている」と、故障予防も心がけている。

昨年のデビューから着実に名を上げ、今やメジャー屈指の剛腕となった。大学時代には右ひざの半月板を損傷し、手術も経験した。「家族が支えてくれた。背中を押してくれて、必ず目標の場所までたどり着けると信じることができた」と感謝。手術前の最速は98~99マイル(約158~160キロ)だったが、苦難を乗り越え、より一層、強くなった。山本由伸、大谷翔平らと争うサイ・ヤング賞には「面白い競争になるよ」と胸を躍らせる。闘争心むき出しのマウンド上とは違い、終始柔らかな表情で語った約10分間。有望な未来へ、野球少年のように目を輝かせていた。

◆ジェーコブ・ミジオロウスキー 2002年4月3日、米ミズーリ州生まれ。クラウダー・カレッジからドラフト2巡目でブルワーズに指名された。25年6月12日のカージナルス戦でメジャー初登板。先発投手がデビュー戦から11イニング連続無安打を記録したのは史上初となった。昨季は15試合の登板で5勝3敗、防御率4・36。今年5月25日、カージナルス戦で投じた96球のうち、100マイル(約161キロ)を超えたのは57球で、1試合で史上最多を記録した。201センチ、91キロ。右投げ右打ち。