<ドジャース3-4ロッキーズ>◇7日(日本時間8日)◇ドジャースタジアム
【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)7日(日本時間8日)=斎藤庸裕】ドジャース大谷翔平投手(31)が、メジャー通算300号の節目に到達した。エンゼルス時代の6年間で171本、ドジャース移籍3年目で129本。投打でのプレーを最大限に生かし、フィジカルと技術を鍛錬しながら、勤勉な姿勢が「二刀流で300号」の金字塔を打ち立てた。メジャー1年目から取材を続ける記者が、元同僚、対戦相手や捕手、打撃コーチなどの証言を元に、打者大谷のすごみを異なる視点から検証した。
◇ ◇ ◇
打者大谷から最も近い位置で動きを観察する捕手は、どんな印象を受けるのか。数々の正捕手に聞いてきたが、初めて耳にする証言があった。エンゼルスのトラビス・ダーノー捕手が「スイングの音が聞こえる数少ない打者の1人だ。バットが空気を切る音まで聞こえてくるような打者は、メジャーでもほんのひと握りしかいない」と明かした。
強豪ブレーブスでワールドシリーズを制覇した経験もあるメジャー14年目のベテラン捕手は、キャリアで500人以上の打者と対戦した。スイング音を響かせる選手で名を挙げたのは大谷を含めて6人。ヤンキースの主砲ジャッジとスタントン、フィリーズのシュワバーとハーパー、そしてホワイトソックスの村上だった。MLB公式データ分析サイト「ベースボール・サバント」によると、大谷のバットスピードは23年をピークに年々、数字としては下がっているが、背後の捕手にはメジャー屈指の力強さが伝わってくるという。
エンゼルス時代、6年間ともにプレーした右打者のテーラー・ウォード外野手(現オリオールズ)は大谷の取り組みを間近で見ていた。「彼がやっていることをマネしようとしてもできない。彼は、バットスピードを上げようと意識していた。室内練習で、ものすごいスピードで振っていた。それは今でも鮮明に覚えている」。その成果はエンゼルス時代の最終年に表れ、大谷はバットスピード平均77・4マイル(約124・6キロ)の自己ベストをたたき出した。豪快なスイングは、空振りでも球場がざわめくようになった。
移籍3年目の今季、フルシーズン二刀流を目標に掲げる。投打のプレーで32歳の体にかかる負担は計り知れない。少年時代から染みついていた全力疾走も、確実なアウトのゴロでは塁間の途中でベンチへ引き返すこともある。特に投打で同時出場している際は、瞬発力をあえて抑える意図があるようにも見える。「次の回に集中した方が勝てる確率は高くなると思うので、勝てる確率を高くするための戦略」と言う。最大効率を高める-。その意識は、打席でもあるようだ。
6月から本塁打のペースが上がった。4月と比べ、7センチほど狭くなった両足のスタンス幅の訳をベイツ打撃コーチが説明した。「狭く立つことで姿勢を真っすぐ保っている。楽に動けて力感を抑えられることにも、利点がある」。大谷にとって最も重視する構えの軸は変わらない。姿勢良く、力感のない状態から出力をフルにする。エネルギーを余計に消費すれば、体力が削られる。逆に最大効率を上げれば、10月のポストシーズンまで精度の高いパフォーマンスを維持できる。
もっとも、打者大谷と投手大谷は互いを助け合っている。ダーノー捕手は「とても頭がいい。投手と打者、両面で野球を理解している」と評し、配球を読まれたような対戦もあったという。過去に6本塁打を浴びたアスレチックスのランゲリアーズ捕手も「相手が自分に対してこういう攻め方をしてくるだろうと、完全に把握している」と、頭脳面で傑出していると証言。メジャーで急速に進むパワーとスピード野球に対応し、自分にしかない能力を組み合わせた。最高峰のリーグの中で大きな差を生み出すゆえんが、そこにある。