【MLB特集】実績のない選手との長期大型契約相次ぐ メジャー経験ない3A選手に147億円も

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今季の米大リーグは、実績のない若手選手との長期大型契約が相次いでいる。パイレーツは新人のコナー・グリフィン内野手(20)と、球団史上最高額の約217億円で契約。マリナーズが、全くメジャー経験のない3Aの選手に8年約147億円で契約した例も現れた。行き着くところまで進んだ感もあるが、なぜ、このような契約が多発しているか、背景を紹介する。【斎藤直樹】

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開幕直後の4月、MLBに衝撃的な契約が伝わった。メジャーで6試合にしか出ていない、当時19歳のグリフィンが、パイレーツと球団史上最高の1億4000万ドル(当時のレートで約217億円)で9年の契約延長をしたからだ。まだメジャーでは18打数3安打の実績しかない高卒2年目の遊撃手。確かにマイナーでは昨年、122試合で21本塁打、65盗塁で打率3割3分3厘、OPS・942と圧倒的な成績を残していた。今季も6試合でOPS1・584とずば抜けていた。とはいえ、あまりに早い長期契約締結は、故障などのリスクもはらむため、波紋を呼んだ。

最たる例は、マリナーズのコルト・エマーソン内野手(20)だ。なんと1試合もメジャー経験がないまま3月31日、8年総額9500万ドル(当時のレートで約147億円)で契約延長に合意した。メジャーデビュー前の契約では史上最高額。昨年は3Aで遊撃を守り、16本塁打、14盗塁、打率2割8分5厘、OPS・841だった。5月17日にメジャーデビューした後は、45試合に出場し、7本塁打、打率2割1厘、3盗塁、OPS・671。まだ年俸に見合った成績は残せていない。

他にも、ブルワーズのクーパー・プラット内野手(21)が、メジャー経験のないまま、8年総額5075万ドル(当時のレートで約78億7000万円)で契約延長した。ブルワーズのルイス・ララ外野手(21)も、メジャー未経験で6月に7年3100万ドル(約49億6000万円)で契約延長した。タイガースは、メジャー1年目のケビン・マゴニグル内野手(21)が17試合でOPS・909とみるや、すかさず8年1億5000万ドル(約240億円)で契約延長した。新人王候補として目されている。カージナルスは、J・J・ウェザーホルト内野手(23)と球団史上3位の8年総額1億1250万ドル(約180億円)で契約延長した。

なぜ、このような若手との大型契約が頻発するのか。理由は複数ある。パイレーツやブルワーズは、いずれも小規模マーケット、もしくは年俸総額が低い球団だ。大市場ロサンゼルスのドジャース、ニューヨークのメッツやヤンキースなどではない。実績を残した選手をFA市場で獲得する資金力はないが、所属マイナー選手を早期に、長期に囲い込む程度なら可能だ。2年連続サイ・ヤング賞を獲得したタイガースのスクバル投手は2月、年俸調停で史上最高額3200万ドル(当時のレートで約49億6000万円)で契約した。今や、FA市場に出る前でさえも、好選手となれば調停で高年俸は避けられない。それなら、好成績を残す前に長期契約を結んでしまえ、という訳だ。ましてや、今オフは労使協定の改訂が控えている。

球団にもリスクはある。レイズは22年、メジャー2年目のワンダー・フランコ内野手(当時21歳)と球団史上最高額の11年1億8200万ドル(当時のレートで約200億円)で契約延長した。ところが23年には未成年者との性的関係が発覚して休職に。メジャー復帰は絶望的とみられている。マリナーズは19年、2Aのエバン・ホワイト内野手(当時23)と6年総額2400万ドル(当時のレートで約26億2000万円)で契約延長した。20年にゴールドグラブ賞こそ獲得したが、21年は30試合に出場しただけ。以降は長打力不足が露呈し、メジャー出場がない。有望株が必ずしも成功するとは限らない。

このように失敗例もあるが、21歳で最長17年となる契約を結んだマリナーズのフリオ・ロドリゲス外野手は、今や球界を代表するスターとなった。ブルワーズは23年、3Aで19歳だったジャクソン・チョウリオ外野手と8年総額8200万ドル(当時のレートで約123億円)で契約延長。順調に主力打者として、お手ごろ価格で囲い込んでいる。

今季、大規模市場球団はFAの大物争奪戦へ、中小市場規模球団は若手の長期契約へという流れが両極化した。だが、今オフ改訂予定の労使協定次第では、来季以降に変化が生まれる可能性もありそうだ。