【MLB特集】ハーフスイングに自動判定を導入、マイナーリーグでテスト開始

今季の米大リーグで最大の変化は「ロボット審判」と呼ばれるボール-ストライクの自動判定のABS(Automated Ball-Strike System)だろう。だが、その先の技術がある。既に3Aでテスト運用が始まっているのが「ハーフスイングの自動判定」だ。これまで、チャレンジの対象にさえなっていなかった「人間の判断」を要するとされた領域が、いよいよ自動化されるかもしれない。

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あまたある野球のルールの中でも、最もあいまいだった部分が機械で判定され始めた。実は、ハーフスイングは公認野球規則(Official Baseball Rules)に定義がない。「ストライク」が「投手の正規な投球で、審判員によって“ストライク”と宣告されたもの」とされ、例として「打者が打った(バントの場合も含む)が、投球がバットに当たらなかったもの」が挙げられているだけだ。このため、ハーフスイングの判定は、審判の裁量に委ねられていた。だからこそ、リプレー検証の対象からも外れている。

明確な新基準と機械による自動判定が、今年5月5日から米3Aのパシフィック・コースト・リーグでテスト運用され始めた。バットのグリップからヘッドの角度が、ホームプレートから投手方向へ45度を超えた場合は、スイングとなる。45度以下ならノースイングだ。

今年からメジャーリーグでも採用されたボール-ストライクの自動判定システム(ABS=通称ロボット審判)と同じく、球場に複数台設置された光学トラッキングシステム「ホークアイ」で撮影されたデータを使用する。ABSと同様に、撮影されたデータはバットの動きだけを抽出し、チャレンジされると、すぐに分かりやすく場内の電光掲示板に映し出される。ABSと同様に、投手と打者と捕手のみによる1試合2度(成功すれば継続)のチャンレジ制度が用いられる。1球に対し、ABSとハーフスイング判定の同時使用はできない。

もう一方の3Aであるインターナショナル・リーグでは、機械判定は用いないが、審判員に45度基準の適用が課された。45度は本塁から一塁、三塁へ向かうファウルラインと同じ角度。意図的かどうかは不明だが、機械がなくとも、一目で分かりやすい基準になっている。

これまで一般的にハーフスイングの判定は、打者が打ちにいっているか、手首を返したかどうか、バットが投球に対して交差したか、バットの位置が本塁前方を越えていないか、打者がバットをコントロールできていたかなどを総合的に審判が判断していた。一瞬の動きを球審が後ろから判定するのは難しく、塁審に判断を委ねることができるプレーでもある。複合的な要素を人間が一瞬で「打ちにいったか」を「判断」してきたものを、バットの最大振り出し角度のみに絞るのが、今回のルール変更の要点だ。ウォールストリート・ジャーナル紙によると、MLBでは25年までに人間の審判は平均18度が、スイングとノースイングが同じ割合となる分岐点だったという。

昨年は1Aのフロリダステート・リーグ、アリゾナ・フォール・リーグで試験的に運用されていた。その際、三振率が3%下がったという。裏を返せばインプレーの打球が増えるということで、試合の中で選手の「動き」を求めるMLBの傾向に合致している。

微妙な判定をどんどん機械を用いて、画一的に行うというのは、大リーグ機構が進める方針だ。審判の八百長加担や審判への誹謗(ひぼう)中傷を防ぐという意図がある。背景にはスポーツ賭博の合法州が広がり、ベッティング運営業者からのスポンサー資金が大きくなってきている現状がある。最近では、スポーツベッティング専門サイトだけでなく「予測市場」と呼ばれる「カルシ」などもドジャースやヤンキースをスポンサードしている。

米大リーグで採用されたルールは、多くが数年後に日本でも導入される。既にNPBの全本拠地にホークアイが設置されている。メジャーでハーフスイングの自動判定が成功すれば、日本に入ってくる日も遠くなさそうだ。【斎藤直樹】

◇マイナーリーグでテスト中の主なルール◇

(1)二塁のベースを本塁側に寄せ、完全に内野の中に入れる。一、二塁間、二、三塁間が9インチ(23センチ短くなる)。

(2)先発投手が再登板できる。交代したイニングに25球以上を投げていた場合に限定。

(3)捕手が守備側のサインを出すためにキャッチャーズボックスを離れてもピッチクロックは止まらない。

(4)打者は無走者時にタイムが取れない。

(5)投手がプレートを離れられる回数が2回から1回に減少。