<レッズ2-8ドジャース>◇17日(日本時間18日)◇グレートアメリカンボールパーク
【シンシナティ(米オハイオ州)17日(日本時間18日)=斎藤庸裕】ドジャースが5年連続で地区制覇を達成した。右上腕二頭筋の炎症で負傷者リスト(IL)入りしている大谷翔平投手(32)は不在。豊富な資金でスター選手らがそろう一方で、主力が故障しても次々と他選手がカバーする底力がある。大谷の移籍から3年間、常勝ド軍を密着取材してきた斎藤庸裕記者が、なぜ、チームにぴったりとはまる選手を発掘できるのか、その謎に迫った。
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昨季途中、ある選手から興味深い言葉を聞いた。「ドジャースは人間性も重視して、選手をとっているみたい」。シーズン密着の3年で抱いた謎の一つが、答えに近づいている気がした。次から次へと戦力となる選手が発掘される。それも、チーム状況が苦しい時に、ぴったりはまる。マイナー組織を管轄し、選手育成部門を担当するウィル・ライムズ副社長は、球団スカウト部門の“特色”について証言した。
「正当に評価されていない(掘り出し物の)選手を見つけ出すことに強い情熱を持っている。国際契約金(ボーナスプール)も最も少なく、ドラフトの指名順位も毎回、最後の方。他では評価されていないけど、ここで開花できるかもしれない選手を見つけ出すことが、彼らの誇りなんだ」
毎年、勝率が高いド軍はドラフトの指名順が下位で回ってくる。つまり、全米トップの有望株の獲得という点では不利になる。それでもマイナー組織が優れているのは、スカウティングと育成力が高い証しだ。
ライムズ氏もかつて、スカウトを経験した。データや数字に基づいたパフォーマンスやフィジカルの強さ、アスリートとしての能力はもちろん、選手を発掘する上で大事な点として内面の分析を挙げた。「選手の全体像を把握して、人間性や精神面、取り組む姿勢まで含めて理解する。多くの映像を見て、選手と多く接点を持ち、人間性まで深く調べる。そういうスカウトほど、最も完成度の高い評価を持ってくる」。
象徴的な選手が、左腕ドライヤーだ。同投手はドラフト外で21年8月にドジャースとマイナー契約を結んだ。ある西地区のライバル球団スカウトは、獲得できなかったことを悔やんでいた。米国中部のアイオワ大に所属していたドライヤーは、当時の状況をこう明かした。「まだトミー・ジョン手術からのリハビリ中で、投げ始めたくらいだった。でも、自分に賭けて、チャンスをくれた」。全国大会などトーナメントで傑出したパフォーマンスを見せたわけでもない。大学時代はむしろ、故障と闘い、ほとんど投げていなかった。
才能あふれる選手は山ほどいる。それでも無名の選手を獲得したのはなぜか-。ドライヤー自身は「一番大事なのは、数字で測ることが難しい精神的なタフさ、強さだと思う。僕の場合、ドラフトでも指名されず、有望選手でもなかった。いろんなことを経験してきたから、何が起きても、前に進む自信がある」と胸を張る。知人を通じ、自ら投球の映像を球団の編成部門の関係者に送った。その意欲やリハビリの逆境に立ち向かう姿が評価され、マイナーから25年にメジャー昇格。競争を勝ち抜き、今ではリリーフ陣に欠かせない存在となった。
人間性まで深く調査する球団スカウトの文化。ドライヤーは「すごく(内面を)見ていると思う。100%、そう言える。それが、彼らの大きく優れているところだと思う」と断言する。ロバーツ監督やベテラン選手らはよく、チームを「レジリエンス(挽回力=ばんかいりょく)がある」と表現する。球団は選手を獲得する時点から、その力があるかどうかも見極めていると言える。
それは、若手に限らない。ド軍に所属して10年目のベテラン野手マンシーは、現在のベンチ枠25人の選手では在籍歴が最も長い。アスレチックスから戦力外通告を受け、ド軍で花開いた不屈の選手の代表格だ。逆境に立たされても、泥臭く乗り越える-。「僕らがここで築いてきたものの一つだと思う。今、野球界で最も難しいのは、ドジャースでプレーすることかもしれない。多くのプレッシャー、期待、注目がある。でもそれは特権だし、だからこそ、楽しい」と、重圧をプラスに換える気概がある。
常勝球団に根付く逆境に強い文化は、懐疑的な目を向けられてきたメジャーでの二刀流に挑戦し、何度も偏見を覆した大谷翔平も体現している。そういう選手たちの集団が勝ち続ける伝統を築く。大谷不在だろうと、打撃不振だろうと、チーム全体でカバーして勝てる。マンシーは言った。
「1試合の責任を1人の選手だけが背負うことはない。誰かがミスをしても、大きな一打を放ったとしても、すべてはチーム全体の力によるもの。毎日、全員で戦っていると思って球場に来れば、野球の試合でいろいろなことが起きても、乗り越え、先へ進みやすくなる。僕がここに来てから毎年、チームはそういう考え方を大切にしてきた」
メジャー史上最長タイの14年連続PS進出を決め、5年連続の地区V。強くあり続けるには、それなりの理由がある。